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2009年横浜選手権に向けて

秋場 2009年の世界選手権横浜大会に向けての準備や選手の強化などはじまっているのでしょうか。

木村 私たち日本卓球協会では、常に日本選手の飛躍の場を提供したいと考えています。その絶好の機会が2009年の横浜大会です。とくにいま日本代表になっている若手選手が大きく飛躍し、自分自身の夢を実現させてもらいたいものです。それが、私たちの夢でもあるわけですから。
 そういうことを考えて私たちは準備を進めています。まあ、現実問題として、世界大会を開催するには、選手の強化費用、大会開催費などお金がかかります。それも、たくさんのね。それも私たちが集めなければなりません。このお金集めが大変なんです。

秋場 協賛スポンサーの獲得とかに奔走されているわけですか。

木村 はい。でも、選手ががんばってくれれば、われわれもそういう準備活動に、よりいっそうがんばれるわけです。日本選手がメダルを獲得できるために、何不足なく練習できる環境や状況をつくりたいと考えて行動しています。
 具体的な開催準備として、今年の2月に組織委員会をつくって、ザグレブの世界選手権には15人の視察員を送り込みます。来年の北京大会は団体戦ですから、個人戦の世界選手権として参考にできる最後の機会がザグレブ大会です。

秋場 世界選手権は日本で何度も開催(1956年東京、1971年名古屋、1983年東京、1991年千葉、2001年大阪大会)されています。

木村 競技運営面での心配はしていません。ですが、横浜でははじめてなので、地元の卓球協会、横浜市(行政)の人にとっては初体験です。横浜大会のスタッフとして実際に仕事をする人が、この人たちをふくめた15名です。この人たちが、ザグレブの現地に飛んで、大会運営や準備を自分の眼で観るわけです。
 まあ、大会運営面では絶対的な自信があります。問題は選手強化です。千葉大会では日本は1つもメダルが獲れず、大阪大会では女子団体、女子ダブルス(武田明子、川越真由)がともに3位の銅メダルでした。
 横浜では、もうすこし色の変わったメダルがほしいですね(笑)。そのメダルを表彰台でぶらさげる日本の選手を見たいわけです。そのために、ぼくなんか協会役員をやっているようなものですよ。

秋場 ところで、日本卓球協会の専務理事という役職は、一般の人たちにはどういうように説明すればいいのでしょうか。

木村 日本卓球協会における、ありとあらゆる執行責任者です。理事会で決まったことの執行、また新たなアイデアも出す、それからマーケティングもやる、将来の人材も考える、などですね。まあ、卓球のために身も心もつかう人ですよ(笑)。

秋場 外部から協会を傍観していますと、木村さんが専務理事になられて、その活動ぶりがはっきりと見えるようになりました。

木村 まあ、人によって考え方がちがいますから。私の場合は、専務理事というのは、燃えるような卓球発展への信念をもつ、というような役職であると。

秋場 木村さんは実行力の人というように見えます。

木村 実行もしなくてはいけないし、プランも出し、お金も集めなければならないし。

秋場 そのお金集め、スポンサー開拓で、聞いたことがあるんですが、全日本選手権の大会スポンサーになっているサッポロビールは、木村さんが営業されたとか。

木村 飛び込み営業ですよ。何度もサッポロビールにおじゃましてね。サッポロビールさんが「木村さんには負けたよ」といって、スポンサーになっていただきました。サッポロビールのテレビコマーシャルが話題になって、それをきっかけとして営業をかけたわけです。まったくの飛び込みです。全日本のオフィシャルスポンサーはサッポロビールで、このたび新たに「スターツ」(スターツコーポレーション)に 、ナショナルチームのオフィシャルスポンサー になっていただきました。(ナショナルチームのオフィシャルスポンサーはほかにミズノ、全日本空輸)。シチズン(全日本選手権オフィシャルスポンサー)にも何度もおうかがいしました。一生懸命に活動していると、企業もちゃんと理解していただけます。
 国際大会に年間27、28回、選手を派遣しますから、とにかくお金を稼がないと。

秋場 その派遣費用を全部稼がないといけないわけですか。

木村 そういうこと。あと収入面では卓球協会加盟費がありますが、昨年は少子化の影響で減ったので、まあその分もなんとかしなくてはなりません。


27歳から40年間、休まず卓球の授業を

秋場 この早稲田での講義はもう何年になるんですか。

木村 27歳のときだから、40年近くなります。会社(ゼネラル石油、現・東燃ゼネラル石油)に勤めているときは、会社が休みの土曜日だけ、週1回だけ教えてました。退職してからは、火・水の週2回の3コマ。

秋場 教えておられて、どうですか。

木村 かわいいよ。学生たちは。若い連中と付きあっているのはたのしいから。

秋場 忙しいときとか、面倒くさいとか、思われないのですか。

木村 いや、思ったことないです。たのしいから。世界選手権などで海外に行くときは休講にしなくてはいけないでしょ。だから、かわいそうなんで、ほかの先生に頼もうとしたら、大学がね……。
 まあ、ぼくはひとりの卓球ファンですから。なんとか、若い人たちの卓球ファンをつくるためにも大事にしていかなくてはとも思ってます。

秋場 どういう立場で教えておられるのですか。

木村 非常勤講師です。

 これで、第1回目の木村さんのインタビューは終了です。また、節目でインタビューさせていただこう考えています。
 お話しをお聴きしていて、ご本人も述べておられるように、心底からの「卓球ファン」だということが、ひしひしと伝わってきた。
 木村さんは日本卓球協会専務理事として、正式に受け取れる報酬を一切受け取っておられない。それは木村さんご本人の意思、「断固として、一銭もとらない主義」としてである。なぜなら、「そういうお金があるなら、選手の強化につかってもらいたい」だからだそうだ。「志高く。武士は食わねど、だ」
 このインタビュー(5月14日)から10日後には、世界選手権のためにザグレブに発たれる。日本選手団の責任者として、また世界卓球連盟執行副会長としての仕事が海外で待っている。


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                      秋場龍一

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