これがほんとうの基本だ

 卓球における「スイートスポット」について展開したい。
 スイートスポットは、ゴルフで使われる用語であるが、クラブフェイスの芯にボールが当たったときの感覚をいう。ほんとうにボールを芯でとらえたとき、柔らかくて、その名のとおり、あまーい感触が手に伝わってくる。ゴルフボールは硬いし、クラブヘッドは金属だからとうぜん硬いし、そんなものどうしが当たるのだから、スイートな感触なんて感じるはずはないのだが、これが不思議なことに、そう感じるのだ。
 スイートスポットにあたると、ソフトなタッチながら、ボールは二段、三段という感じでぐんぐん勢いをつけて伸びていく。クラブとボールがもっとも合理的にヒットすることで、このような飛びが生まれるのである。
 では、卓球ではどうだろう。卓球にも、スイートスポットの感覚がある。スイートスポットに当たると、ボールがラケットフェイスに当たったときの球離れがよく、しかもぐーんと伸びる。スイートスポットで打てば、ゴルフほどではないが、卓球でも柔らかくてあまーい感触を味わうことができる。
 スイートスポット打法は、特別な打法ではない。私は、ごくあたりまえの基本打法だと考えている。日本では、一般にひろく認知された基本打法とはなっていないが、やはりこの打法をスタンダードにしないかぎり、日本の底辺の技術レベルはアップしないし、したがってトップクラスの飛躍も望めないだろう。
 では、卓球で、いかにすればスイートスポットで打つことができるのだろうか? スイートスポット打法を獲得するにはどうすればいいのだろうか?

ラケットの芯を食え!

 これは単に、ラケットフェイスの中心部に当たればいいというものではない。中級程度のプレーヤーであれば、ほとんどの打球はラケットの中心部に当たっているはずだ。ラバー面を見れば、中心部と周辺では、ボールが当たった頻度を示すように、色が変わっているはずだろうし、粉がついた新しいボールで打ってみても中心部が白くなっているはずだ。だから、ほとんどのプレーヤーはラケットの中心で打っていることになる。
 だが、柔らかくて、あまーい感触なんて味わったこともないし、強振しても威力あるボールは打てないプレーヤーは多い。だから、かならずしも、ラケットフェイスの中心部で打っても、スイートスポット打法とはいえないのだ。
 スイートスポット打法は、単にラケットフェイスの中心に当てることではない。中心部で打つことはとうぜんだが、「芯」でボールをとらえなければならない。野球で、「芯を食う」というのは、このことだろう。卓球でも、芯を食わないと、スイートスポット打法にはならない。
 では、どうすれば、芯を食い、スイートスポットを味わえるのか? フォアハンド・トップスイングのスイートスポット打法をレクチャーしてみよう。右ラケットハンドのフォアハンド・クロス打ちのケースで例示する。

1.相手側コートのクロスからきたボールにたいして、その  飛んでくる方向の延長線のコースにバックスイングをとる。

2.このとき、飛んできたボールの高さにも注意して、ボールと同じ高さにバックスイングの高さをとる。

3.ラケットフェイスの角度は裏ソフト、表ソフトなど、ラバーの弾みかたによって、多少異なるが、一般よりも「立て気味」(テーブルにたいしてラケットが90度の角度に近くなる)にする。

4.そのまま相手のクロスに角度を作って水平にスイングする。

 以上、スイートスポット打法の要点をピックアップすれば、これだけだ。これが、ラケットとボールがもっとも合理的にヒットする打ち方である。これで、上記した、柔らかくて、あまーい感触の、威力あるボールが打てるようになるはずだ。
 この先を書いてみたいが、今回はあえて、ここでやめることにする。この1〜4を実際に試していただきたい。その上で、これから先のレクチャーを読んでいただいたほうが、より理解が深まるだろう。次回は、スイートスポット打法の確認の仕方と、スイートスポットとスイング・バランスについて展開したい。

スイートスポット打法その2

                    (秋場龍一)