技術論 飛躍の連打(1) of 卓球技術研究所t3i

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技術論 飛躍の連打(1)

現代卓球に不可欠なテクニックとは……

岸川の活躍をヒントに

卓技研の今年のテーマは「飛躍の連打」である。
それは世界でもそうだし、町中の試合でも、あらゆる卓球のステージで
そういう傾向が顕著になってきている
現状にふまえてのコピーだ。

もうすこし突っ込んで展開すると
「飛躍の連打」とは、
もちろん単純にラリーがつづくだけではない。
それはかなりのスピードとスピン、
それにパワーをもってのラリーなのである。
ひとむかし前なら、
決定打になっている強打とか強ドライブのレベルで
ラリーが応酬するのだ。

卓球にかぎらず、
「技術」というものにゴールは存在しない。
どんなに究極、至高のものであっても、
それは一時的なものであり、
やがては他のそれに、
その地位を譲るときがかならずくる。
それはこれまでの歴史が教示してくれているし、
もしそうでなかったら
ヒトというタイプの生物の存在意義は
まったくなくなるといわないまでも、
かなり薄弱になることはまちがいないだろう。

じつは卓球の進化というか変容というのは、
「飛躍の連打」どころではなく、
卓技研のキャッチコピーにした
「40ミリの球体とのピークエクスペリエンス」
の領域が普遍的というかスタンダードになる時代が、
もうすぐそこにきているのだ。

「40ミリの球体とのピークエクスペリエンス」ってなんだ? 
という人は、もうすこし待ってほしい。
あと、そう10日ほどすれば、
その意味するところをじっくり懇切に展開するので。

その折、近代卓球というか、
近代スポーツのつぎにくる
卓球やスポーツの姿が垣間見えるだろう。

さて、「飛躍の連打」である。
この現代卓球の象徴的なトピックが
昨年の岸川聖也選手の活躍である。
その戦績を見ると、だれもが目を見張るものだ。
なんと、陳杞(世界ランク9位)、ボル(世界ランク4位)、
そして馬龍を破ったのだから。
馬龍は世界ランクの2位で、
いま中国でもっとも勢いがあり、
力量としては中国ナンバーワン、
したがって世界一の実力の持ち主である。
そんなとんでもない強豪を岸川が打倒したのだ。

そういえば岸川は
昨年1月の全日本(平成20年度)の準々決勝、
水谷との対戦において、
ほぼ勝ちかけていたことを思いだした。
優勝した水谷を
土俵際まで追い込んだのは岸川だけだった。

しかし彼は世界卓球横浜大会の
シングルスの代表から外された。
おそらく選考者は岸川よりも丹羽の、
世界でのステージを観たかったのだろう。
わたしはこの選考を非難しない。
なぜなら、正直、わたしも岸川より丹羽を観たかったからだ。

あの選考時点で岸川か丹羽かなら、丹羽だろう。
それだけ丹羽の卓球センスというか、
その伸びしろは次代の世界を担うものと
期待して当然だったからだ。

いっぽう岸川に、
その実力や伸びしろを疑っているわけではないのだが、
そのプレースタイルや
水谷との対戦で露呈した勝負弱さを鑑みると、
いまひとつ物足りなさを否定できなかった。

選考者がどういう視点で岸川を落としたか不明だが、
上述した点が影響したことはまちがいないだろう。

しかし、ご覧の通りの岸川の怒涛の快進撃を見るにつけ、
そのプレースタイルや「勝負弱い」と映ったメンタルは、
じつは次代を牽引するニューモデルだった
ということに気づくのである。

では、岸川の、「そのプレースタイル」とは、
いったいどういうものか。
それは昨年来、卓技研で躍起になって展開している「間」である。
つまり、自分のタイミングをいかにとるのか、という点である。

岸川のフォアハンドとバックハンドの使用比率は五分五分か、
レシーブでは四分六分になっているほど、
バックハンド系を多用する。
レシーブや3球目にバックサイドに回り込んで
フォアハンドで強打や強ドライブで決めに行くシーンを
ほとんど見たことがない。
相手のレシーブが高く浮けば、
それはもちろん踏み込んで打つが、
それでも80パーセント程度の強さだろう。

前に踏み込まない、
バックサイドに回り込んでフォアハンドで決めにいかない。
これが岸川のプレースタイルのまず第一の特徴である。

こういったプレースタイルの特徴から、
わたしは岸川を「男チャン・イニン」と呼んでいる。
中国の女子卓球は、
めざすプレースタイルを「男子化」としているそうだが、
チャン(張)の卓球は男女の性差を超えた
新しい領域のプレースタイルなのだ。

あのプレースタイルをこなせるからこそ、
チャンはこの間、世界のトップを譲らないのである。
だから、卓技研は「チャン」と「間」をしつこく解説してきたのだ。

あのチャンの卓球スタイルは現代卓球において、
普遍性をもった優位さがある。
チャンと対戦したどんな強豪でも、
試合が始まってすぐに勝てる気がしない
という思いにとらわれるだろう。
チャンのスタイルは、相撲の取り口でいえば横綱相撲、
いまの大相撲なら、あの白鵬の圧倒的な安定感だろう。
岸川のプレーは、
そんなチャンの強さと安定感を彷彿させるのである。

さて、岸川のつぎの特徴は、
これはみなさんもよくご存知の
バックハンドの強さである。

前中陣からトップスピンのかかった、
かなり威力のあるボールを
何度でもばしばし打ち込めるのだ。
バックハンドのラリー対決なら、
岸川はまちがいなく世界一だろう。

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