全日本(21年度)優勝者予想 of 卓球技術研究所t3i

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卓技研恒例
全日本選手権観戦記

優勝者予想と見どころ


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[平成22年度]

本日1月21日で大会4日目。
男女シングルスはほぼ順調にスーパーシードの選手が勝ち進んだ。
また混合ダブルス、男女ジュニアの優勝者が決定した。

今回の大会の一つの特徴は、
はじめて「アリーナ席」がお目見えしたことだ。
競技するフロアに階段状の席が新設された。
その分、競技スペースがやや窮屈になり、
貴賓席サイドの観客席からだと、
手前のコートが半分程度しか観ることができない。
これはぜひ改善ねがいたいものだ。

また、今回驚いたというか、いささか憤慨したのは、
妙齢というか少々ご高齢の婦人たちの
観客席での雑談のうるささだ。
4、5人が横に並んで、試合とはまったく関係のない世間話を
ごく普通の音量で、のべつ幕なしにぺちゃくちゃと、
非常に耳障りの悪い声質で話す。
聞きたくなくても、話の内容が耳に入る。まあ、くだらない話だ。
そんな話をわざわざ、こんな人が密集し、
試合に集中している場所でしなくてもいいだろう。
真後ろの席で話されると、
その雑談の声が耳元でがんがんくるからたまったものではない。
ずっと我慢していたが、堪忍袋の緒が切れて、
振り向いて「静かに!」とご注意申し上げた。
それで、ぱたっとやんでほっとした。
マナーは試合だけではなく、観客席でもよろしくお願いします。

[男子リポート]
ほぼ順当にスーパーシードの選手が4回戦を勝ち上がった。

水谷隼(1、5、5、-9、8)立松

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第1ゲームから第3ゲームまでは水谷の圧勝ペース。
さすが世界ランク7位という試合ぶりだ。
ところが第4ゲームになると様相が一変。
水谷が立松に押されまくり。
水谷追い上げるもののこのゲームを落とす。
そしてこの立松優位ペースは第5ゲームに入っても同じで、
一時水谷2-8で、このゲームも水谷落とすのかと思ったら、
3ポイント目を獲るやいなや、またしても形勢が逆転。
その後は実力どおりのゲーム・ペースというか、
水谷が圧倒して、その後1ポイントも奪われずにゲーム・オーバー。
つくづく、試合というのは、流れというか波というか、
水谷ほどの実力があっても、
第4ゲームから第5ゲームの中盤までは、
もう完全に立松ペースで、水谷はなにをやっても得点にならなかった。
しかし、2-8の形勢から、1ポイント奪うや一気に逆転してしまうあたり、
さすが水谷は全日本4連覇の実力者だけのことはある。

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丹羽 孝希(4、6、5、8)藤村 友也
丹羽の試合を丹念にウォッチした。
やっぱり彼は天才というか、
現日本男子卓球界のなかで
もっとも天性の素質に恵まれていることを再確認した。
ジュニアの部の試合も観たが、
どの試合も実力的にも精神的にも余裕があった。
ジュニアの準決勝で野田学園の吉村に
ゲームオールのファイナル8本で勝ったが、
たしかにポイントこそ競っていたけど、
丹羽本人はほとんどあせらなかったのではないか。
では丹羽のどこがすごいのか。
彼は飛んでくるボールにたいして「反射的」に対応していない。
ほとんどのボールを自分の間、自分のタイミングとして「観れる」、
最高のストロング・ポイントを有しているのだ。
これができると、卓球にかぎらず、
数あるボールゲームのスポーツのなかで
絶対的優位にたつことができる。
むかし、プロ野球の天才打者といわれた川上哲治は
「ピッチャーの投げるボールが止まって見える」と言ったが、
これと同じような状態で丹羽はボールをとらえることができるのだ。
このボールのタイミングを獲れるということに関しては、
元世界女王の張怡寧に匹敵するのではないだろうか。
もう一点、丹羽のすばらしいところは、
ボールを待つ時、いつもフォアハンドとバックハンドの両方
どちらでも対応できる体勢をとっていることだ。
もちろん、水谷にしろ松平健太、それに岸川でも、
両ハンドで待つ体勢ではあるのだが、
丹羽ほどスムーズにごくしぜんに対応できてはいない。
サービスも、フリックなどの台上処理もうまい。
丹羽の課題はパワーだ。
十分にバックスイングをとれるボールがきても、
それをドライブや強打一発で仕留めるパワーが、やはりまだ不足している。
いずれフィジカルの強化とともにパワーがついてくるだろうが、
できればロンドンオリンピックまでに、
数段のパワーアップを積んでほしいところだ。
パワーがなく一発で仕留められないために、
より前陣でより高い打球点で対応し、
また逆モーション・ドライブやコース取りのうまさなどで補っている。
非力を技術力でカバーすることで、
より高いテクニックを身につける必要性に迫られて、
それが丹羽の技術力を高める結果につながっている。
あす、22日は5回戦で小野竜也に勝てば
おそらく韓陽との対戦になるだろうが、
ぜひとも韓陽にも勝って、
準々決勝で水谷と対戦してほしいものだ。

森薗政崇(6、-12、-9、7、9、4)森田有城
中学生(青森山田中)の森薗が1回戦から学生や社会人、
それに攻撃型からカットマンまでを打ち破って4回戦を突破した。
まだ身体は中学生だけど、
卓球は「丹羽2世」を彷彿させるほどセンス抜群だ。
丹羽の次の世代も確実に育っていて心強い。
あすの岸川戦がとても楽しみだ。

[女子リポート]
女子はベスト8まで決まった。
一部波乱があったものの、ほぼ順当に有力選手が勝ち上がった。

小西 杏(-8、5、9、-6、9)福岡 春菜
予想したとおりの白熱したゲームになった。
小西は所属は「個人」でも練習を積んでいるのか、
まったくおとろえ知らずに高速ピッチの卓球をしていた。
福岡も非力なフォアハンドがよくなり、
全体的にも以前より攻撃力が付いたようだ。
しかし、福岡の得意技「王子サーブ」はほとんど使わなかった。
日本選手やとくに元ミキハウスの同僚では
慣れられていて効果がないのだろうか。

藤沼亜衣(-11、11、10、-1、9、-9、6)田代早紀
どちらかというと藤沼はやや形勢不利な感じだったが、
藤沼のこれまでにない粘りが出て勝利をもぎとった。
藤沼のラリー戦できまったときの球筋のよさは、
日本女子のなかでもピカイチだ。

森薗 美咲(6、-8、8、5、7)石垣 優香
森薗は5回戦で越崎歩にも勝っており、
実力派カットマン二人を倒したわけだ。
これでこの高校生はかなりの底力をもっていることが証明された。
22日の藤沼との一戦が楽しみだ。

平野 早矢香(7、-6、7、7、8 )山梨 有理
平野は積極的に攻める姿勢が以前よりでていた。
それにしても綺麗な卓球だ。
厳しく言えば、攻めというか、戦略が単調すぎる。
プレースタイルは張怡寧によく似ているが、
平野本人は張を意識しているのだろうか。
もしそうだとしたら、全体的なボールの速さというかパワー、
それに逆モーションを身につけたいところだ。
また、ラリー戦でバックハンドで対応するとき、
トップスピンをかけようとしすぎて、
逆にボールのスピードをみずから殺してしまっている。


石川 佳純(11、9、-7、-11、10、8)小西 杏
いやあ、杏はまだまだ強い。
とくに速いピッチのラリー戦なら、石川と一歩もひけをとらない。
このゲーム、前半は石川、中盤は小西、
そして後半は石川という流れがあったけれど、
この強敵をしのぐあたり
さすが石川のメンタルはたいしたものだ。

渡辺 裕子(9、7、-4、7、-11、7)若宮 三紗子
正直、若宮が勝つと読んでいたけど、いやいや渡辺が強かった。
渡辺は最近絶好調の若宮に終始押して、攻め勝っていた。
22日準々決勝で石川との対戦が楽しみだ。

福原 愛(11、4、6、10)藤井 優子
ゲームカウントは4-0だが、第1と第4はリードをゆるしており、
このゲームを福原が落としていれば
結果はどうなっていたかわからない。
しかし、リードされても福原は弱気にならず、
いたって平常心で積極的にプレーしていた。
福原は3球目をもっと強いアタックをしないと、
バックハンドのバックサイドからストレート攻撃だけでは、
ちょっと攻め手が単調すぎる。

高橋真梨子(-9、5、7、8-7、7 )土田 美紀
順当なら樋浦が勝ち上がってくるであろう
このブロックを勝ち上がったのは
1回戦から飛び出してきた高校生(四天王寺高)だった。
それにしても、その身体、スイングフォームなど、
遠く観客席から観ていると、
「あれ、石川?」と見間違えるほどよく似ている。
プレー全体というかスタイルも、石川と酷似している。
高橋も将来が明るい選手だ。
22日の準々決勝で福原と対戦するが、
「もしかしたら……」という何かを感じさせる雰囲気をもっている。

その2

本日1月22日で大会5日目。
いよいよ今年度の全日本も残すところあと2日となった。
今日の試合はテレビでも放送されご覧になった人も多いだろう。
会場の東京体育館は例年以上の入場者を集めたようだ。
さて、まず女子の準々決勝から始まったが、
勝者は藤沼、藤井、石川、福原。
平野が藤井に負けるとは想定外だった。
平野はもう一度、一から自分の卓球というか、
プレースタイルを見直したほうがいいだろう。
明らかに、大きな壁にぶちあたっている。
平野のいままでの延長線上での成長をうながすよりも、
すべてゼロからリセットしたほうがいいのではないだろうか。

藤沼VS森薗はなかなか森薗も健闘したが、
いま一歩及ばずといったところ。

若宮戦では、かなりいい当たりをみせた渡辺だったけど、
石川との一戦でははっきりと「レベルのちがい」を
見せつけられてしまった。
福原はストレート勝ちしたが、
ここまでまだ1ゲーム(セット)も落としていない。

女子シングルス準決勝
藤井(-6、5、5、4、6)藤沼
石川(7、-10、3、4、9)福原

さてさて、卓球ファンお待ちかねの
福原対石川のドリームマッチが2年ぶりに実現した。
卓技研はとうぜんこの二人が対戦することを想定し、
福原が勝つと予想した。
なぜなら福原は「今年こそは!」と
期するものがそうとう強いと感じたからだ。
それに明らかにフィジカルが鍛えられ、ドライブにパワーがついた。
そして、ここは先輩の貫録で勝つと読んだのだ。

ゲームが始まると、石川のその成長ぶりに驚いた。
一昨年の全日本でこの二人は対戦し、
4-0で福原が勝っている。
(もっとも、昨年は「トップ12」で石川が勝っているが)
このときはラリー戦となることが多く、
福原が終始ラリーの主導権を握っていた。

ところが、今回はまったく逆だ。
福原が攻勢を仕掛け、ナイスショットを放っても、
石川はしっかりとブロックどころかカウンター気味に反撃し、
福原がラリーでポイントをあげるには
ベストショットを2発3発と連続で決めたときに限定されたのだ。
一昨年とは真逆で石川がラリーを制していた。

福原もこの2年でそれなりの成長をみせたが、
石川はその福原を数倍上回る速度で急成長したことになる。

福原を「超優秀予想」した卓技研だが、
みごとにはずれてしまった。
福原も平野同様に、もう一度自分の卓球はもちろん、
自分の基本技術のフォームから自己分析したほうがいいだろう。
福原復活のポイントを挙げてみよう。

1.サービスの種類を豊富にする。
まったく別バージョンのサービスをもつ必要がある。
現在の福原のサービスは、
もうずいぶんまえから同じバージョンのものだが、
もっとちがうバージョンのサービスを開発するべきだろう。
2.レシーブ攻撃をもっと積極的に。
3.得意とされるバックハンドだが、いまは「手首を軸」に打っているが、
やはりヒジを軸にしたほうが、もっとスピードが増して、
決定打になりやすいだろう。

まだほかにも指摘したいポイントはあるが、
差し詰めここ徹底的に見直してもらいたいものだ。

女子シングルス決勝
石川佳純(10、9、7、9)藤井寛子

藤井にとって悔やまれるのは、
有利にもしくは競っていた
第1、第2ゲームのどちらかを獲りたかったことだ。
とくに第1ゲームを奪取していれば、
もっとこのゲームはもつれたものになっていただろう。

しかし、それにしても石川の思い切りのよさというか、
勝負度胸というか、
あるいはここが勝負どころという局面での
サービスやレシーブ選択の絶妙さは舌を巻くしかない。
サービスではロングサービスを勇気をもって使い、
ベテランの藤井を翻弄した。
またレシーブも少しでも甘いと果敢に攻撃し、
その局面でみごとなノータッチレシーブ・エースを獲っていた。
マザー藤井も、
セブンティーン石川の前に「力の差」を感じたのではなかろうか。

「セブンティーン・クイーン」の誕生だが、
石川王座は当分揺るがないのではないだろうか。
全日本4連覇、5連覇も決して夢ではないだろう。
ここ当分は、日本女子のエースに石川が君臨するだろう。
すくなくとも、石川より年長者には強敵は見当たらず、
もし石川を破るとすれば、
森薗を筆頭とした、彼女より年下から輩出する可能性が濃厚だ。


男子シングルス6回戦
水谷(7、14、10、4)下山

丹羽(10、10、6、7)韓
韓の重量ドライブをまったくひるまずにブロックし、
第1、第2ゲームは得点としては競っていたけど、
試合の形勢はほぼ丹羽のものだった。
もうまちがいなく、「水谷&丹羽2強時代」がやってくる。
それが今年から始まるか来年からかは、
あすの準々決勝での両者の対戦で明確になるだろう。

高木和卓(6、-8、10、6、7)松平健
松平健太が負けた。しかも高木和に。
相性も悪いかもしれないけど、
その作戦といい、勝負どころでの脆弱さといい、
健太にはがっかりした。
がっかりしたのは、卓技研の優勝者予想に健太を挙げたこともあるが、
それよりも勝てる試合をむざむざ落としたことだった。
とくに、第3、第5ゲームは獲れていただろう。
ここ1本という局面で、ことごとく自分の凡ミスでうしなった。
水谷も4連覇のなかでは危ない試合がいくつもあったけど、
それをことごとく踏ん張ってきた。
そこが水谷と健太の決定的なちがいだ。

松平賢(9、-9、7、6、3)坂本
張一博(6、-8、-9、9、8、7)軽部
張の卓球はトップスピン一辺倒ではなく、
高い頂点で角度打ちでカウンターできるのが大きな長所だろう。

岸川(7 、9、4、8)田勢
笠原(9、5、2、7)森本
吉田(5、8、10、-9、8)時吉

また男子シングルス5回戦で
岸川対森薗の対戦を注目した。
結果は4-0(6、10、9、11)のゲームポイントで岸川が獲ったけれど、
その試合内容はかなり拮抗したものだった。
水谷、丹羽のあとにつづくのは、おそらく森薗だろう。
森薗は、この先輩並みか、いやそれ以上の卓球センスを感じる。
森薗に赤丸を付けておいてまちがいないだろう。



この全日本選手権の観戦リポートは、
観戦した当日の夜に書いて、
すぐにこの卓技研ウェブにアップロードしていたのですが、
23日最終日を観戦して、
東京体育館の近くのレストラン
(ちなみに筆者のグループのとなりのテーブルでは、
石川佳純ちゃんのご家族6名の団欒がありました)
で食事をしているとき、
一生にそう何度もないという「急用」の電話が入り、
即、その場から大阪へ直行したのでした。
というわけで、やむなく最終日のリポートをすぐに発表できなくなり、
本日ここに至ったしだいです。

これを読まれるのを楽しみしていた卓球ファンのみなさん、
申し訳ありませんでした。

さて、最終日は男子シングルスと女子ダブルスの
準々決勝から決勝まで行われた。

男子シングルス準々決勝

水谷(2、9、2、2)丹羽
録画していた放送をあとで観ると、
テレビ解説の宮崎全日本監督が
この対戦を「事実上の決勝戦」と語っていた。
まさに日本男子の実力ナンバー1とナンバー2の
激突であることにまちがいあるまい。

今年度の全日本の最高の対戦カードだろう。

この勝負の結果はほぼ想定できたけれど、
そのプレーそのものを観る楽しみは
「結果」なんて二の次だと思ったほどだ。

カウントを見るかぎり水谷の圧勝だし、
会場で観戦していて、水谷が負ける感じは1パーセントもなく、
この対戦の勝負においても水谷の圧勝だった。
結果はだれもがそうしたとおりの結果だ。

ただし、そのゲーム内容は白熱しており、
そのプレーの技術的レベルは世界最高水準だと評しても
けっして過言ではないすばらしいものだった。

水谷については、
このあとの準決勝や決勝でのリポートで述べるので、
ここでは丹羽についてだけ言及してみよう。

丹羽の卓球スタイルというか、
間の取り方、
あるいは打つまでの間合い、
打つタイミングのバランスを観ていると、
かなり余裕をもってプレーしていることがわかる。
この余裕は、メンタルの余裕にもつながり、
日本でいちばんビッグのビッグタイトルのこの全日本でも、
かなりの楽しくプレーしているようにみえる。

この丹羽の打つ間合いに、
彼の生まれ持った天性のすばらしい能力を感じる。
まあ、「天才」といえば、それまでだけど。
筆者は「天才」なんていう用語をほとんと使わないし、
こんな言葉を用いるのは、
卓球コーチとしても、職業的文筆家としても好みではない。
しかし丹羽には天才を見てしまうのだから仕方がない。

またこれは前記したが、
フォアハンドとバックハンドの両ハンドを
ほぼ均等にどちらでも打てる態勢で対応しているプレーヤーも、
世界ひろしといえどもそうはいないだろう。
ヨーロッパや中国のトッププレーヤーだって、
やはりいくらかはフォアハンドに偏重しているのに。

丹羽の課題はテクニックでもメンタルでもない。
それはフィジカルだけだろう。
彼に不足しているのはパワーだけなのだ。
15歳の成長過程の少年だから、これは如何ともしがたい。
体が大きくなるまで、待つしかあるまい。

だが、このパワー不足が
テクニックを高度化させることに役立っている。
パワー不足の丹羽は、
日本や世界のトップクラスと対戦すると、
1本で仕留められるところを
2本3本と連続攻撃で重ねることが必要となり、
またドライブなら右に左に曲げてサイドを切ることはもちろんだけど、
その曲げ方はより大きくなり、
サイドを切る角度もより鋭角になる。
さらにフェイント・逆モーションも
その日本男子きっての使い手である水谷にも
けっして劣らないほどたくみだ。

この丹羽の存在により、
来年7月開催のロンドンオリンピックに向けた
陣容は2名がほぼかたまった。
あと1名は松平健太の予定だったけれど
今年度のたたかいぶりの不甲斐なさに、
ほかの面子をさがす必要に迫られている。

さて、その1名はこの準々決勝で出てきた
水谷と丹羽をのぞいた6名のなかに
見つけ出すことができるのだろうか。
そのこともふくめて、
この観戦リポートは展開します。


水谷、全日本男子、未踏の5連覇達成!

水谷と対戦した丹羽、高木和卓、張と
かなりの力量をほこるのだが、
水谷はそんな彼らを一蹴した。
ここ1年で「一蹴」できるまでに
進化を遂げたといってもいいだろう。

水谷はこの1年で大いなる進化をとげた。
もちろん彼は、ずっと進化しつづけていたのだが、
この1年はいままでとは桁違いの進化を見せたのだ。

「全日本予想」でもすでに書いているが、
これまで水谷の4連覇の軌跡を振り返ってみると
かならず2度ほど危ない試合があった。
そしてそのうちの1試合は「もうここまでか」という
絶体絶命の淵に立たされたものだ。
たとえば、一昨年では岸川と、昨年は張との対戦だ。
ところがだ、今年はそんな試合は1試合もなかった。
奪われたゲーム数(セット数)も以下の通り、
すべて合算してたったの2ゲームだけだ。

4 回戦
水谷 隼 4(1、5、5、-9、8) 1 立松 圭祐

5 回戦
水谷 隼 4(5、7、9、5) 0鹿屋 良平

6 回戦
水谷 隼 4(4、14、10、4)0 下山 隆敬

準々決勝
水谷 隼4 (2、9、2、2) 0丹羽 孝希

準決勝
水谷 隼4 (10、-6、7、10、9) 1 高木和 卓

決勝
水谷 隼 4(7、8、5、3)0張 一博

その試合内容もまったく危なくなかった。
「勝負」という意味では、今年の全日本は面白くなかった。
水谷の負ける気配が1パーセントもなかったからだ。
しかし、そのプレーそのもの、とくに水谷のラリーは
「観るスポーツ」としての卓球を思う存分楽しませてくれた。
ほんとうに目を見張るプレーが随所にあった。
卓球はやっても面白いが、
観ても面白いということを水谷がはっきりと証明してくれた。

では水谷のなにがよかったのか。
それは「たくましさ」だ。
テクニックのたくましさ。
フィジカルのたくましさ。
メンタルのたくましさ。
まさに3拍子の「たくましさ」が
絶妙なバランスでみごとなトライアングルをえがいている。

まず「テクニック」だけど、これまでのように
すぐに下がってロビングをあげない。
日本人選手にはそうであっても、
中国のトップにはロビングなどまったく通用しなかった。
かれはそれを反省して、それを糧にして
高い攻撃力の獲得を主眼に
テクニックとプレースタイルと戦術の領域をひろげたのだ。

そして、前陣、中陣、後陣とどこでも
攻撃的にプレーできること。
とくにこの決勝戦の相手の張は
打球点が高く、球速が速く、
しかも攻撃力だけではなく守備力も兼ね備えているが、
水谷は台から離れず自分も頂点打法で
張が得意とする高速ラリー戦を制した。

さらにドライブも多彩だ。
右に左に激しく弧をえがく「曲げるドライブ」のほか、
得意の「フェイント・ドライブ」、
そして今回際立ったのが「ライジングドライブ」だ。

そして、このライジング打法を用いて、
クロスに飛んできたボールをストレートにコースシフトすると
もののみごとにノータッチで抜けた。

今後、この世界の傾向は、
「ライジングドライブ(カウンター)」と「ストレートへのコースシフト」が、
決定打の切り札となるだろう。
これも「ハイブリッド・タクティックス」の一例だ。
前陣や中陣から、クロスにリターンされたボールを
ライジングでストレートコースへ打つのだ。
もちろん、このライジングはトップスピンでなくてもかまわない。
むしろノンスピンの強打やカウンターのほうが
ラケットとボールの球離れがよくて
相手に移動の時間を与えなくてよりベターだろう。

それと水谷が優勝インタビューで語ったように
「サービスとレシーブ」の重要性である。
水谷はラリーを制したと同時に
サービスとレシーブも制したのである。
いみじくも、張は「水谷のサーブにやられた」旨の発言をしている。
そういえば、昨年の決勝の相手だった吉田も
水谷のサービスには散々苦しめられたものだ。

全日本にかぎらず、世界レベルでも
いや町中の大会でも、すべて共通しているのは
試合で勝とうと思えば「サービスを強化」することだ。
そして、そのサービスはたえず「更新」することである。
水谷は全日本に臨むにあたって、
この「試合に勝つオキテ」を確実に実行している。

負けた相手は前回対戦した相手の特徴を分析して
それに対応してくる。
とくにサービスで苦しめられた相手には
その対策を十分に練ってくるものなのだ。
そのためにこそ、全日本に出場するほぼすべての選手は
自分の試合をビデオに収録している。
相手のサービスをアップにして、スローにして、
何回も何回も繰り返してみることで
前回と同じ轍を踏まないように備えるのだ。

そして、その勝った選手も、
相手がそんな研究をしてくることは百も承知だ。
そこでサービスを「更新」するのだ。
たとえば同じフォームから、
これまでになかった「曲がり」や「回転」「コース」を
新たに加えるのである。

第2に、フィジカルのたくましさだ。
その打球パワー、俊敏なフットワーク、
疲労を感じさせない持久力は日本男子ナンバーワンだろう。
とくに、松平健太や丹羽の非力をみると
水谷の強靭な身体ががぜんクローズアップしてくる。
このフィジカルの強化も中国戦から学んだのだろう。

水谷もメンタルのたくましさは、
もう高校で全日本を獲ったときからだが、
いまではそのテクニックやフィジカルの裏付けをともなって
よりいっそうタフネスに成長している。

5月のロッテルダム(オランダ)世界選手権は
シングルスとダブルスの個人戦だが、
水谷がこれらの種目でメダルを獲るだけでは、
もはやぼくたちは満足できない。
やはりいちばん輝くヤツでないと。
それはもちろん、水谷本人も望むところだろう。

秋場龍一


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NEWS
石川佳純、世界ランク4位の郭躍(中国)を破る!
イングランド・オープン

石川佳純4(8、-2、7、9、-4、-11、7)3郭躍

22日に全日本選手権女子シングルスで初優勝したばかりの石川は
ITTFプロツアー2011「イングランド・オープン」3回戦で
郭躍(2010アジア大会銀、2009世界選手権2位、
2008北京オリンピック銅、2007世界選手権優勝)に勝った。
郭躍を破ったことは、全日本優勝の自信と、
なによりその力量が世界トップクラスで
あることを裏付けたことになるだろう。
それに佳純ちゃん本人もコメントしているとおり、
「絶対オリンピックに出たい!」という決意が大きい。
おそらく、彼女には「覚悟」ができているのだろう。
ほんとうに「覚悟」できたとき、
人は無類の強さを発揮するものなのだから。
次の準々決勝では李暁霞(中国・世界ランク3位)に0-4で負けた。
また女子アンダー21では優勝した。

秋場龍一


平成22年度
超予想!全日本卓球選手権
★★★みどころと優勝者をズバリ!★★★



恒例の「卓技研・全日本大予想」です。
今年は「超予想」と銘打って、かなり大胆にうらなってみました。
また、今年は「全日本ウォチィング」も詳細にリポートしますので
全日本を観戦できないファンのみなさん、どうぞお楽しみに。



男子は大波乱の予感。まさか、あの水谷が……
女子は福原、石川、平野に死角あり……

今年もまた全日本が始まる。
男子シングルスは水谷隼の史上初の男子5連覇がかかり、
優勝候補の大本命でもある。
さて、その王者・水谷を打倒するものは存在するのか?

女子は昨年の覇者・王輝が引退し、
福原愛が悲願の初優勝をねらうも、
進境著しい石川佳純、
それに全日本5回優勝の実績と安定感をほこる平野早矢香
の女子強豪トリオがしのぎをけずる。
だが、そこには思わぬダークホースが女王の座をねらっている……。

今回は[男子]と[女子]の2回連載に分け、まずは男子から予想したい。


[競技スケジュール]

18日(火) 
ミックスダブルス1・2または3回戦
男女ジュニア1回戦

19日(水)
女子シングルス1回戦
男子ダブルス1回戦
女子ダブルス1回戦
ミックスダブルス3・4回戦
男女ジュニア2~4回戦

20日(木)
男子シングルス1・2回戦
女子シングルス2~4回戦
男子ダブルス2・3回
女子ダブルス2回戦
ミックスダブルス準々決勝
男女ジュニア5回戦~準々決勝

21日(金)
男子シングルス3・4回戦
女子シングルス5・6回戦
男子ダブルス4・5回戦
女子ダブルス3・4回戦
ミックスダブルス準決勝・決勝
男女ジュニア準決勝・決勝

22日(土)
男子シングルス5・6回戦
女子シングルス準々決勝~決勝
男子ダブルス準々決勝~決勝
女子ダブルス5回戦

23日(日)
男子シングルス準々決勝~決勝
女子ダブルス準々決勝~決勝

今年の全日本男女シングルスの競技日程は
22日の土曜日に男子が準々決勝から決勝、
そして翌23日の日曜日に女子が準々決勝から決勝が行われる。

テレビ放送(NHK教育)は22日と23日の15時から予定されている。
昨年までとはちがって、
男女の決勝戦がともに生放送でテレビ観戦できるわけで、
卓球ファンとしてはありがたい。

[TV放送]
22日(土)
12時~(14:50)BS1……女子シングルス準決勝・男子ダブルス決勝ほか(延長なし)
15時~(16:00)教育………女子シングルス決勝(延長なし)
19時~(20:50)BS1……女子シングルス決勝・男子ダブルス決勝ほか(延長なし)

23日(日)
12時~(14:50)BS1……男子シングルス準決勝・女子ダブルス決勝ほか(延長なし)
15時~(16:00)教育………男子シングルス決勝(延長あり)
19時~(20:50)BS1……男子シングルス決勝・女子ダブルス決勝ほか(延長あり)

男子(その1)

男子は、ごくまっとうに考えれば水谷で決まりだ。
全日本4連覇の実績、
それに国際ステージでの活躍もめざましく、
最新の世界ランク(2011年1月)では7位に入っている。
ランク上位のサムソノフ(6位)、
それに1位のボルには、
オープンゲームや世界選手権で水谷は勝っているのだ。

もう水谷は、「世界のトッププレーヤー」と称号されても、
すこしも違和感を感じない。
来年7月に開催される2012年ロンドン・オリンピックは、
優勝候補のひとりに挙げられるだろう。
そして、水谷本人もロンドンでの「世界奪取」を
ターゲットにしているはずだ。
そんな水谷が、全日本で負けている場合ではない。
それに全日本男子史上初の5連覇もかかっている。
ちなみに藤井則和(1946~49年)、
斉藤清(1982~85年)が4連覇している。

全日本に強く、世界トップレベルの力量を有した水谷に
不安材料は見当たらないようだ。
しかし、こういうときこそ、
思わぬ落とし穴がまっているもの。
勝負の神様は、
時にどんでん返しのストーリーを描くものだ。

では水谷が「もし、負けるとすれば……」、
それはどんなゲーム展開になるだろうか。

水谷はたしかにボルやサムソノフなど、
ヨーロッパのプレーヤーには強い。
ドイツ・ブンデスリーガでの経験もあって、
ヨーロッパ卓球には慣れていることが大きいだろう。

ところが、中国のトッププレーヤーとの対戦となると、
水谷のプレーの様相が一変する。
中国卓球に慣れていないこともあるが、
昨年の世界選手権団体戦で馬龍との対戦では、
はっきりと「実力の差」を見た。
水谷も「中国の壁」を思い知ったはずだ。
そして、この敗戦を契機として、
みずから中国超級リーグ参戦を志願したのではないだろうか。

では中国とヨーロッパの卓球のちがいはどこにあるのか。
それはずばり「攻撃力」だ。
そのポイントは「打球点」と「フットワーク」と「フィジカル」にある。
中国はヨーロッパよりも、
打球点が高く、フットワークが俊敏で、フィジカルの強靭さに
裏打ちされたパワーとスピードがある。

こう言ってしまえば、身も蓋もないが、
要は中国選手は「底力」をもっている。
こうすれば試合に勝てるというポイントを確実に身につけている。

水谷が中国選手に負けるとき、
それは明らかに「力負け」する。
水谷が得意とされていた、
「天性のボールコンタクト」や「ブロッキング」は、
中国の「攻撃力」「底力」には通用しないのだ。
「天性」や「素質」は不可欠だが、絶対ではない。

では、そんな中国選手に匹敵する選手が
全日本男子に見つけることができるだろうか。
もちろん存在しない。
しかし、中国選手に近い
一発に秘めた攻撃力をもっている選手がひとりいる。
そう、松平健太だ。

もし水谷を倒すとすれば健太が筆頭だろう。
なぜか。彼独特の攻撃力を秘めているからだ。
昨年の全日本でベスト32で敗れるなど、
ここ1年ほど低迷していたが、
昨年の後半から復調の兆しをみせ、
10月には水谷をストレートでくだしている(オーストリア・オープン)。
またアジア競技大会でも活躍するなど、
健太はよみがえった。
そうなれば、
あの前陣での破壊力たっぷりのバックハンド・スマッシュを駆使して、
水谷を撃破する可能性は十分にある。

では、あとの選手はどうだろう? 
水谷、松平健太につづく優勝候補は考えられるのか?
そして、見逃せない「好取組」は?
それらについては、あすにつづきます……。


男子(その2)


きのうのつづきです。
水谷を倒せる筆頭は松平健太だが、
健太以外にも、
その可能性を秘めた選手にも見つけることができる。
可能性の高い順に挙げてみよう。

[水谷有力対抗馬]
① 松平健太
② 張一博
③ 岸川聖也
④ 丹羽孝希
⑤ 吉田海偉
⑥ 松平賢二

水谷は全日本4連覇しているから、
かなり余裕をもって連覇を成し遂げた
と思っている人が多いかもしれない。
しかし、実際に大会会場で観戦してみると、
毎年のことだけど、
水谷が優勝するまで
二度ほどかならず接戦のゲームがあり、
そのうちの一つは「負けるかも」「やばいなあ」という
敗退してもけっしておかしくない試合があった。
毎年度、「薄氷を踏む勝利」というのが、
かならずあったのだ。

だから、今年度もそういう試合はかならずあるだろうし、
①松平健太から⑥松平賢二まで、
水谷と対戦したら「絶対勝ってやろう」という、
かなり強い気持ちをもっているはずだ。
また、そうでなければ、
これらのプレーヤーは日本のトップレベルとしての
ポジションをキープできなかっただろう。

[男子の予想好ゲーム]
まず、今年度のスーパーシード(32)の組み合わせをご覧いただこう。


平成22年度 全日本卓球選手権大会(男子シングルス スーパーシード)

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予想される好ゲームを紹介したい。
といっても、
もちろん実際に以下のような対戦が実現するかわからない。
この「予想好ゲーム」は、
これまでの実績と実力にプラスしての予想と、
こういう対戦になったらいいなあという、
筆者の願望が入っていることをおことわりしておく。

●第1ラウンド
まずベスト32とベスト16までの対戦のなかでピックアップしてみた。
① 水谷VS下山
② 丹羽VS韓陽
③ 岸川VS町
④ 大矢VS上田

以上のなかで、
とくに注目されるのは②のゲームだろう。

②の32歳のベテラン韓陽と16歳の高校生丹羽の対戦は
「年の差16対決」「年齢差2倍対決」
ということでも注目に値する一戦だ。
勢いからいうと断然、丹羽に軍配があがるけれども、
そこは元中国ナショナルメンバーである張は、
今年度こそ優勝候補に挙がっていないが、
前年度以前は毎回優勝候補のひとりとなっていた実力者だけに、
そう簡単に16歳下の高校生に屈するとは考えられない。
ベテランに頑張ってもらいたいという気持ちもあるが、
やはりここは丹羽が勝って、
次の水谷戦へぜひコマを進めてほしいところだ。
やはり、水谷VS丹羽は、全日本で観たいものね。

●第2ラウンド
⑤ 水谷VS丹羽
⑥ 松平健太VS松平賢二
⑦ 張VS岸川
⑧ 上田 VS吉田

この第2ラウンドの「予想される好ゲーム」だが、
まあこの対戦が実現される可能性は75パーセント程度か。
しかし、この4戦はかなり見ものだし、ぜひ実現してほしいものだ。

水谷は下山にはまず負けないと思うが、
丹羽となると断言できない。
「もしかしたら……」という気持ちが
⑤の対戦に募るのは筆者だけではあるまい。

松平兄弟対決の⑥に注目。
この兄弟、ずっと弟の健太が実績、実力とも上位だったけれど、
ここのところお兄ちゃん賢二の進境が著しい。
それは昨年12月下旬に開かれた
「2011世界卓球選手権大会(ロッテルダム)
男子日本代表選手権選考会」
で見事に1位となり
その代表の座をもぎとったことが証明している。
この選考会は水谷と吉田こそ出場していないが、
その他、日本のトッププレーヤー20名が出場して、
その半数10名が総当たりで対戦して勝ち抜くという
「底力」がためされるハードな試合だった。
それを8勝1敗(負けた1敗は藤本海統)で1位となり、
準決勝で笠原弘光、
決勝では丹羽(ゲーム・オールのファイナルゲーム12-10)を
相手に勝ち取ったのだ。
もし、弟に勝つようだと、
賢二が今大会の台風の目になるかもしれない。
ここは松平の兄と弟のふたりに大注目しよう。

張と岸川は昨年に対戦しており、
このときは張が勝っているが、
ここは岸川は負けられないだろう。
12月の世界選手権選考会で落選している岸川だけに、
なんとしても今大会優勝して、
ロッテルダム行きのチケットを奪取したいはずだ。

⑧の上田と吉田の対戦は勝敗の妙味もあるが、
白熱したラリー戦になることが想定され、
卓球のおもしろさを存分に堪能できる一戦になりそうだ。
練習を十分に積んでいれば吉田に勝機があるが、
上田は着実に力量をたくわえてきており、
上田に分がありそうだ。
だが、吉田も全日本ではしぶとい。
水谷同様、決勝に進出するまで、
何度か「危ない」というゲームを勝ち抜くのが例年のパターンで、
今大会もそのしぶとさを発揮するかどうか注目したい。

というところで、
卓技研の今年度全日本選手権の男子優勝者予想は、
準決勝で水谷と松平健太が激突し、
ゲームカウント2-4で松平健太が勝ち、
その勢いで決勝戦を制し、
晴れて優勝を飾るという展開となった。

松平健太 優勝!?
(卓技研・超予想!全日本選手権)

健太の優勝予想は昨年につづいてのこと。
昨年は健太は32であえなく敗退し、
卓技研予想は惨敗の憂き目をみたけれど、
今年こそ昨年のリベンジといきたいところだ。
ガンバッテネ、健太くん!


●女子(その1)

昨年の「卓技研予想」は男子は大外れだったが、
女子は「王輝」優勝をズバッと的中させた。
今年も昨年同様に当てにゆく。

さて、今年度の女子の優勝戦線のゆくえは混沌としている。
昨年度2位で今大会第1シードに入った藤沼亜衣、
それに5度制覇している平野早矢香、
もちろん世界ランク8位(2011.1)の福原愛、
そしてここのところぐんぐん力をつけ
世界ランク11位まで躍進した石川佳純。
この女子4強は
だれが優勝杯を奪取してもおかしくない実力者ぞろいだ。

また、日本女子卓球界のマザー・藤井寛子をはじめ、
世界選手権選考会で1位となり代表となった若宮三沙子、
パワーたっぷりの阿部恵、
復活をかける樋浦令子といった面々も
女子4強を倒す力を十分に秘めている。

それに、越崎歩、石垣優香のカットマン、
めきめき頭角をあらわしている森薗美咲、
さらに小西杏、福岡春菜、福平暁のベテラン実力者も
女子4強に十分拮抗する力量がある。

女子優勝者予想はあす発表するが、
きょうは女子4強プラス1の個人評を述べてみたい。

藤沼のその卓球センスはピカイチだ。
卓技研ではこの全日本予想で毎年高い評価をしている。
そして昨年度の大会ではその評価にこたえて準優勝を飾った。
課題はメンタルであることは本人も承知しているところ。
「失うものは何もない」という気持ちで、
なにも考えないでボールを見つめるということだけに専念すれば
優勝の可能性は十分ある。

平野はここのところ低迷ぎみだ。
世界ランクも17位まで下げ、
8歳下の後輩石川に抜かれてしまった。
平野がめざすプレースタイルは「世界標準」で
けっしてまちがったものではないのだが、
攻めの姿勢とパワーが見劣り、
それにつなぎボールがあまりにも脆弱すぎる。
横綱相撲をとるのはいいのだが、
「受け」に入りすぎるきらいがある。
「受け」ではなく、相手を「見る」こと。
こう言ってもいい。
一見受けているようで、じつは先手をとることだ。
平野が教訓とすべき対戦相手は、
力負けする中国や韓国、それにヨーロッパのプレーヤーだ。
その敗因は平野本人がもう十分に分析しているだろう。
日本選手ではなく、
世界トップのパワーを凌駕することをめざせば、
平野はもっともっと大きなプレーヤーになるだろう。
平野、「見て、ぶち抜くんだ!」

福原の体がかわった。
たくましく変化している。
とくに背筋が強化された印象を受ける。
そらくフィジカル、
とりわけ体幹トレーニングをしっかり積んでいるのだろう。
その訓練の成果は
とくにドライブのパワーとなってあらわれている。
「全日本で愛ちゃんは弱い」これはもう定着してしまった感がある。
福原と対戦する相手は、かなり思い切ってかかってくる。
そりゃそうだろう。
福原の試合には報道陣がわっと押し寄せ、
観客席の視線のほとんどが注がれる。
こんな状況では、相手は思い切っていくしかないだろう。
そんな相手に対応するには、
それ以上の思い切りのよさと、
勝負に拘泥しない平常心が必要だ。
ありていにいえば、「集中すること」。
集中するとは、飛んでくるボールに意識をただ向けることである。
それと、試合の重要な局面で下を向いて考え込まないこと。
相手に、そんな自分を見られてはならない。
常に「態度として」は相手を見ること。
もちろん、自分を見ることは必要なのだが、
それは顔色や態度にださないことを肝に銘じよう。

石川は藤沼にヒケをとらない天性の卓球センスがあり、
また勝負度胸もある。
っていうか、あまりビビらないタイプなんだろう。
もちろん、それが活かせることも多いが、
あまりにも「普通」の精神状態でいすぎると、
試合の序盤にリードをゆるすことがある。
だから格下に第1ゲームをうしなうことが多いのだ。
試合開始前に、
自分を「高める状態」にもっていく訓練をしたほうがいいだろう。
「進境著しい」という言葉がぴったりの石川の近況だが、
このままの勢いでいくと、
「セブンティーンのクイーン」が誕生するかもしれない。

もう一人ぜひこの4強にプラスしたい。
じつは、ほんとは5強だと考えている。
それは若宮だ。
彼女は石川を上回るほど進境著しい。
昨年年末の世界選手権代表選考会で
みごとに1位となり代表の座を勝ち取ったが、
かなりの実力をたくわえているとみてまちがない。
今年度の全日本の台風の目というか、ダークホースというか、
「ひょっとしたら」と思わせてしまう最近の充実ぶりだ。
若宮にぜひ注目してほしい。

あすは「超予想!全日本」の優勝者予想の発表と
スーパーシード(32)の組合せからの
「予想好ゲーム」を展開します。


●女子(その2)

[女子の予想好ゲーム]
今年度のスーパーシード(32)の組み合わせをご覧いただこう。

平成22年度 全日本卓球選手権大会(女子シングルス スーパーシード)

2010全日本女子.jpg

●第1ラウンド
ベスト32とベスト16までの対戦のなかでピックアップしてみた。

①森薗VS越崎
②森薗VS石垣
③小西VS福岡
④石川VS③の勝者(小西または福岡)
⑤若宮VS阿部

ベスト16まではこんなところだろうか。
①と②は森薗の実力がどれだけあるのか試される
カットマンとの対戦。
彼女に「底力」があれば越崎、石垣といった
手強いカットマンをくだすことができるだろう。
ただし、越崎と石垣のカットマン対決も観たいし、
その前に伊藤と石垣の対戦も楽しみだ。
伊藤は日本女子のなかでは屈指のパワードライバーなので、
石垣のカット・ブロックをぶちぬく可能性も十分にある。
日本女子の底上げのためにも、
伊藤のようなパワーヒッターが活躍することを願う。

③の小西と福岡の対戦は、
もう「ベテラン対決」と呼んでいいだろう。
小西は所属が「個人」になっているけど、
十分に練習を積める環境にあるのだろうか。
もし、練習をやりこんでいれば、
福岡に勝つ力は十分に持っている。

④はおそらく福岡が出てくるだろうが、
そこはあの小西の杏ちゃんだから、
こういうように福岡と小西を併記するしかなかった。
まあ、このどちらが出てきても、
石川は相当な苦戦をするだろう。
福岡、小西とも、石川との対戦ということになれば、
もういつもの倍するエネルギーでたたかうはずだ。

しかし、このスーパーシード32を4つのブロックに分けると、
石川から渡辺(裕子)までのブロックに
ツワモノが集中した感がある。
この8人はみんな個性派ぞろいで、
とくに若宮、阿部は、藤沼、平野、福原、石川を
打ち破る力量を十分に備えている。

⑤はその若宮と阿部が対戦するのだから、
これはぜひ注目したい。
昨年12月の世界選手権選考会で、
この両者は対戦しており、
このときはゲームカウント3-1で若宮が勝っている。
ちなみに若宮が1位、阿部は7位だった。
卓技研は今大会、若宮に大注目しているが、
じつは阿部の力をかなりかっている。
ただし、阿部は若宮と対戦する前に、
まず渡辺裕子に勝たないといけないが。

●第2ラウンド

⑥藤沼VS石垣
⑦藤井VS平野
⑧石川VS若宮
⑨福原VS樋浦

⑥の藤沼の対戦相手は
石垣以外の越崎、森薗、
それに伊藤が出てくる可能性もある。
藤沼はカットマンに弱いといわれるが、
これは実際にいままで
「格下」のカットマンにもやられたことがあるので、
否定できないところだ。
でもここは藤沼、カットマンに勝たないことには、
これから将来の展望が見えないのではないだろうか。

⑦は順当なら平野だろう。
藤井は前陣でふところの深い卓球をするので、
全日本では藤井と対戦したくない選手が
多いのではないだろうか。
平野はどうだろう。
それにあの藤井得意のバックハンドドライブは、
ストレートコースというか
センターから相手(右利き)のフォアサイドへ
するどく切れ込んみ逃げてゆく。
このコースへのバックハンドドライブが
何発も炸裂するようだと
平野危うし、ということにも。

⑧この石川と若宮のサウスポー対決は、
正直どちらに勝負が転ぶか予断をゆるさない。
筆者は五分五分とみている。
この⑧が第2ラウンドで
もっとも注目される対戦となるだろう。

⑨今大会、福原は組合せにめぐまれたのではないだろうか。
なんてことを言うと、同じブロックに入った選手たちに失礼だろうか。
とりわけ第2シードの樋浦には……。
樋浦は昨年2月の故障の影響で昨年は不振だったけれど、
もともと力量があるバランスのとれたオールラウンドプレーヤー。
福原の長所と短所は知り尽くしているはずで、
そう簡単には屈することはないだろう。
さて、福原だが、例年の全日本では、
決まったように樋浦クラスの相手に涙を呑んできた。
今年もその危惧は消えないけれど、
今年は取りこぼしなく準決勝まで進むのではないか。
そして、一昨年につづいて、
やっぱり福原VS石川の対戦をまたふたたび観たい。

そんなわけで、準決勝で福原と石川が激突。
4-3の白熱した高速ピッチのラリー戦を制した福原が
はじめて全日本の決勝のステージへ登場。
石川に勝った勢いそのままに決勝戦も勝って、
悲願の全日本初優勝を飾る。
勝利者インタビューで
愛ちゃんのよろこびの涙が眼に浮かぶ……。

福原愛 優勝?!
(卓技研・超予想!全日本)

とまあ、こんな結論になったしだい。
いつまでも福原と石川はいいライバル関係をつづけて、
おたがいを刺激しあいながら成長してほしいものだ。

さてさて、みなさんの優勝予想は誰でしょうか?

秋場龍一



[平成21年度]

【女子シングルス予想】

いよいよ全日本が始まりましたね。
そこで、もうすっかり新年初頭の恒例となった
「卓技研・全日本予想」です。

まず、今年度のトピックはテレビ放送(NHK教育)が、
いままで1回だけだったのが2日間に増えたこと。
女子シングルス決勝と男子ダブルス決勝(1月16日(土)午後3時~)と
男子シングルス決勝と女子ダブルス決勝(17日(日)午後3時~)と
なりました。

これは卓球人気が上がって視聴率がとれるからなのか、
日本卓球協会のアプローチが功を奏したからなのか、
その辺のところ
(今度、木村興治副会長にお会いしたら訊いてみます)
不明ですが、ひとりの卓球ファンとしても、
何だか嬉しい気持ちになります。

では本日は「女子シングルス」の予想とまいりましょう。

組み合わせをみると、
4ブロックのなかで有力選手をピックアップすると

その1 平野早矢香、渡辺裕子

その2 藤井寛子、藤沼亜衣、田勢美貴江、梅村礼、坂本沙織、福原  愛

その3 森薗美咲、照井萌美、狭間のぞみ、石垣優香、樋浦令子、 河村茉依

その4 石川佳純、藤井優子、谷岡あゆか、 小西杏、福平暁、王輝

……といったところだ。

このそれぞれのブロックを抜け出すのは、

その1は平野はまず確実で、

その2は福原が最有力だが、
坂本、藤井、藤沼あたりに苦戦する可能性があり、

その3は狭間、石垣、樋浦の誰かとみるのが順当だろうが
伸び盛りの森園が突破しそうな雰囲気もあり、

その4は王輝が最有力だが、
石川は王輝に勝っているし、
その前に小西が王輝を破る可能性もある……

このなかで「その2」に好対決が期待されるものが多い。
藤沼対福岡(春菜)の元ミキハウス対決、
田勢対梅村のベテラン・ドライブマン対決が興味をひき、
同じく5回戦の福原対坂本戦は福原楽勝とはならず、
なり白熱したゲームになるのでは。
福原はいままで全日本になると
坂本レベルの選手に苦杯をなめているので、
ここは試金石となるだろう。

さて、女子シングルスの優勝の可能性が高いのは
順に、福原、平野、王輝、石川だが、
決勝に進んだ、それぞれの対戦ケースで
優勝者はかわるのではないか。

それは……
1. 福原対王輝では王輝
2. 福原対石川では福原
3. 平野対王輝では平野
4. 平野対石川では平野

ということで優勝者予想として逃げたいところだけど、
やはりズバッといかないとね……。

ここは平野対福原で福原が勝ち、
決勝に出てきた石川に勝って
愛ちゃんの初優勝といきたいところだが、
王輝対石川で王輝が勝って、
福原対王輝ではやはり王輝ということになる。

そこで卓技研の女子シングルス優勝者予想は王輝に決定!

福原は東アジア選手権の代表を選ぶ日本予選リーグで勝ち抜き、
またITTFプロツアー・グランドファイナルでは
世界ランキング1位の劉詩雯に勝利するなど、
ここのところ心境著しい。
だが、懸念材料もある。
それは日本リーグ・プレーオフで王輝と対戦して
完敗していることだ。
福原のプレースタイルではカットマンに不利という見方もあるが、
やはりカットマンが苦手ということは
攻撃型としての真の実力が備わっていない証左である。

また世界ランク1位の劉に勝ったものの、
劉は大会前に発熱しており出場を危ぶまれたほどの体調だったことを
考慮しないといけないだろう。
劉に勝った次の準決勝の相手、
韓国の金璟娥に勝つようなら福原の実力も本物だと期待したが、
この試合は0-4の完敗で、う~んとうなるしかなかった。

また、福原はメンタルというか、
試合での精神的な駆け引きも覚えたほうがいいだろう。
福原の試合を観戦する人は
つぎのようなシーンを見るか注意してもらいたい。
それは接戦になると、
福原は下を向いて考え込むような仕草を見せるときだ。
いいかげん、このポーズを相手に見せることが、
いかに自分にとって不利なのか自覚できないものだろうか。
私が観るかぎり、全日本でこのポーズをみせたとき
必ず接戦をものにしていない。
あのようなポーズを見せると、相手から見下ろされ、
接戦となりメンタルが勝敗の行方を決めるとき致命傷になるのだ。

しかし、全日本の勝利の女神は
こんなシナリオを用意していたりするかも……

準決勝で福原は平野に勝ち、石川も王輝に勝って、
決勝は福原対石川のドリームマッチとなり、
3-3のタイから最終第7ゲーム、デュースが繰り返され
15-13で福原の初優勝!

まあ、とはいうものの、
実際に王輝の試合を観ると、
ほんとうにまったくミスをしない。
相手が何本ドライブしようが、強打しようが、
コツーン、コツーンとカットですいすいとリターンする。
やはり元中国トッププレーヤー
というものの底力はすごいの一言。

そんな王輝に平野は
昨年度の全日本決勝で逆転勝ちしたのだから、
彼女もだてに
全日本で5度の優勝(現在3連勝中)を飾っているわけではない。

今年度の大会、もし決勝で王輝と対戦したら、
去年のように粘り勝ちではなく
強打で打ち抜いて勝ってほしい。
ドライブ→ドライブではなく、
ドライブ→強打でぶち抜いて
王輝ほどのカットマンに勝ったとき、
平野は世界に通じるトッププレーヤーになるだろう。

平野のテクニックもメンタルも
世界ではすでにトップクラスなのだが、
唯一パワーに欠けるのだ。
世界選手権横浜大会で
ヨーロッパの選手に負けたのは
パワーのなさだったことを思いだしてもらいたい。

石川は王輝に全日本団体で対戦して
これが勝っているのだ。
この試合を観ていないから何とも言えないが、
それにしてもよく勝ったものだ。
石川は試合でエンジンのかかりが遅いときが多く、
そのまま相手に押し切られてしまうこともままあるが、
かといってメンタル弱いというのではなく、
かなりのしたたかさというか、図太さを秘めている。
本音はカスミちゃんが王に勝ってくれて、
愛ちゃんとの決勝戦を観たいものだが……。


【男子シングルス予想】

さて今年の全日本男子だが、
このところトップクラスの3人は、
世界の名だたる強豪を打ち破ったり大接戦を演じ、
今年のモスクワ世界選手権団体では、
もしや中国の強大な「万里の長城」の牙城を崩せるかもしれぬ、
というレベルまで高めている面子の激突である。

それはもちろん、水谷、岸川、松平健太。
この3人が組む団体戦は強いぞ。
なんといっても世界3位のダブルスペア
水谷・岸川組が核になり、
このダブルスで1点を確実にもぎとり、
あと2点をシングルスで、水谷と岸川のどちらかが1点とって、
もう1点を2回シングルスに出る松平がとればいいのだから。
まあ、机上では中国相手でも十分互角に戦える。

今年の覇者はこの3人のうちのひとりである可能性が
すこぶる濃厚だ。

組み合わせをブロックでみると、

その1は水谷隼、丹羽孝希、笠原弘光、韓陽

その2は岸川聖也、張一博、上田仁

その3は吉田海偉、下山隆敬、大矢英俊、

その4は松平健太、松平賢二

といった強豪が陣取っている。

好取組をみると……

その1では、5回戦で水谷対丹羽というベスト4レベルの激突だ。
まあ、水谷が負けることはないと思うが、
この試合は結果よりもそのゲーム内容をぜひ観たいものだ。
同じその1のブロックでは、
5回戦で笠原対韓が予想され、
これも伸び盛りと超ベテランの一騎打ちで、
これは結果が興味深い。

その2では5回戦の岸川対張も注目で、
張はモスクワ世界選手権の日本代表選考会で1位突破して
その座を力でもぎ取っており、
つい最近、世界実力ナンバーワンを破った岸川も
そう簡単には料理できない相手である。
できれば6回戦での岸川対上田もぜひ観たいところだけどね。

その3は、下山対大矢もどちらが勝つか予想がつきにくく面白いし、
その勝者と吉田とのゲームは、
かなり白熱したロングラリー戦になるだろうから、
これは試合の醍醐味が楽しめそうである。

その4は、松平兄弟対決だろう。
実績では弟にゆずる兄の賢二だが、
ここは兄の貫録で弟の健太をねじふせたいところだ。
このゲーム、やりにくいのは健太ではなかろうか。
これも見逃せない。

上記の水谷、岸川、松平健太の一角に食い込むのは
やはり吉田、丹羽、韓で、
つづいて大矢、上田、松平賢二あたりだろう。

さて、ずばり優勝予想といきたいところだが、
1時間前まで水谷、岸川、松平で決まり、
というところまでは絞っていたのだが、
いま現在3分前にようやく決断したところだ。
それだけ、この3人の力量は伯仲している。
だれが制覇してもおかしくないだろう。

では今年の全日本の男子の優勝者を予想する。
それは松平健太できまり

【全日本速報 1.15】
松平健太、初戦で敗れたり!
男子シングルス4回戦
阿部(リコー) ー3、8、ー7、7、7、ー6、9 松平健(青森山田高)
※卓技研の予想はあっけなく外れました。がくっ

なぜ、松平か。
これはもうギャンブル的なヤマカンでしかない。
勢いからいけば岸川だろうし、
実力と実績では水谷で、
では松平健太となると……となる。

じつは健太の、
あのぶちぬきバックハンド強打が目に浮かび、
鋭く相手コートを突き刺さる
球の軌跡に魅惑されたのである。


おそらく私の無意識が、
あの健太の、怖いもの知らずの驚異のバックハンドが、
全日本決勝のセンターコートで連続して炸裂して、
勝利の賜杯をものにする光景を観たいのだ。


☆★☆全日本最多優勝の斎藤清が
これも全日本未踏の最多勝利101勝を
本日(1月14日)に挙げた。
おめでとうございます。

あれは10年以上も前のこと。
わたしが仕事の取材か何かで
三鷹あたりの道を歩いていると、
後ろからひとりの体格がいいというか、
あきらかにメタボな男が
ランニングしながら追い抜いていった。
ンッ? あれはもしかして、斎藤! 
それから2週間後、
全日本が開催され、
テレビや新聞で斎藤が出場していることを報じていた。
現役を引退しても、
全日本に出るかぎりは
ちゃんとトレーニングしていたのだ。

いくら全日本を何度も獲っているといっても、
47歳で全日本一般の部で
予選を勝ち抜くのもそれは大変なことで、
しかも本戦で
現役ばりばりの高校生や大学生を破るというのは、
なかなかできたものではない。

そして積み重ねた数字が101勝! 
斎藤清に満腔から
スタンディングオべレーションをおくりたい。

そういえば全日本100勝に
初めて到達したのは伊藤和子さんだ。
この人は私の卓球の恩人である。
高校のころ、上六のTSP卓球場で
いつも練習相手をしてくださった。
ほんとうに優しくて、
ほんとうに卓球が大好きなオバチャンだった……。



全日本選手権
(平成21年度)
観戦記(1)

【女子シングルス】

既報のとおり王輝が初優勝した。
卓技研が優勝予想したように王はやはり強かった。
王は平野こそ対戦していないが、
準々決勝から石川、樋浦、藤沼と、
向かってくる女子の強豪を
つぎつぎに返り撃ちにしてみせた。

もう、はっきり言ってしまおう。
王レベルのカットマンを攻略できないかぎり、
日本女子の世界頂点の達成は絶望的である。

石川、樋浦、藤沼と、
対カットマン戦法としては
教科書的な優秀賞ものである。
しかしそれはあくまで
「日本標準」としての但し書きが付く。
ということはそうなのだ
「世界標準」としては問題があるということを含んでいる。

石川(14-12、7-11、9-11、7-11、11-8、8-11)王

石川と王が勝ち進めば、
準々決勝で両者が対戦することがわかっていたのに、
卓技研は王が優勝すると予想した。
全日本団体で石川が王に勝っていたのにかかわらず、
この対戦は王が勝つと読んだのだ。

それはなぜか? 
全日本というここ一番の大勝負で、
かつての中国ナショナルチームに所属した王が
石川に敗れるとは考えられなかったからだ。
それよりも、全日本団体でよくぞ石川は王に勝ったものだ。
そこの石川の勝利を讃えたい。

なぜ石川を讃えるのかといえば、
これを実力っていったらいいのだろうか、
現在の時点まで培ってきた力量が
明らかに差があったからである。
もちろん王が圧倒的にそれは豊富なのだ。
そんな王を高校生の石川が破ったことに驚いたのだ。

力量ははるかに豊富だし、
負けて学習したバンテージ・ポイントも加味されて、
王が石川を下すと予想したのである。

とはいっても石川は、それはよくがんばった。
王のカットをドライブ、強打でリターンする石川が放つ打球の軌跡は、
誰よりも勢いがあり、美しくもあった。
もうほんとうにほれぼれするような
球筋のよいカット打ちである。

しかし、王はそんな石川の打球をひるむことなく、
たとえ石川の渾身の強ドライブも強打も、
まるでなにごともなかったかのように、
ふつうにすいすいとカットでリターンする。

樋浦(10-12、12-14、11-8、13-11、9-11、8-11)王

王が石川を破り、
つぎの準決勝でなぎ倒したのは樋浦である。
王が対戦した石川、樋浦、藤沼のなかで、
カットマン攻略に長け、
またドライブのパワーのいちばんあったのが樋浦だ。

上記の両者の対戦の第1、第2ゲームの
スコアを見ていただきたい。
どちらもデュースである。
じつはこの2ゲーム、ほとんど樋浦が勝っていた。
だが、後半に王の驚異の挽回にあって樋浦はとられたのだ。

たとえば第2ゲームだが、
樋浦は10-6でゲームポイントを握った。
しかし、あと1本がどうしてもとれない。
10-10になって、
長いラリーから樋浦がポイントをあげたとき、
樋浦の口から悲鳴のような喚声があがった。
ほんとうに、必死で心の底からあげたポイントだったことを、
この喚声がよく証明している。

石川、樋浦、藤沼のなかで、
王の底力を知った者、
そしてその攻略法について、
いちばん学んだのは樋浦かもしれない。

それだけ樋浦は「善戦」した。
その善戦を糧にすること、
つまり樋浦は王と対戦した実感と、
そのビデオを繰り返しみることで、
かなり大きなヒントを獲得することになるだろう。

王ほどのカットマンを攻略するには技術はもちろんだが、
フィジカル、それにメンタルの持久力が
欠かせないことを思い知らされたにちがいない。

樋浦がカットマン攻略のお手本としてみせたのは、
相手へのバックサイドへのクロス・ドライブから、
一転して相手フォアサイドへのストレート・ドライブである。
この戦術が、
現代的カットマン攻略のいわば王道である。
それが、ここぞというときにきまった。

もちろん、石川もこの攻めを怠りはしなかったのだが、
しかし石川の場合、いとも平気で王にリターンされた。
でも、樋浦はこの攻めで何本かポイントをとれた。
そこに、石川よりも長いキャリアのあることが
伊達でないことを窺わせる。

もし、この2ゲームを樋浦がとっていたら、
勝者は逆になっていただろう。
それだけに樋浦は惜しまれるといいたいところだが、
でも卓技研としては、あくまで樋浦の「善戦」という評価であり、
王が「順当」に勝利したとみている。
その理由は明日のこのコーナーで後述する。

この樋浦とのゲームでは、王は実によく攻撃した。
失念したが、だれかが「王は攻撃がヘタ」とか言ってたが、
もう十分に攻撃もうまいじゃないか。
樋浦が攻めあぐねたり、ヘボなループを連続すると、
すかさず強打に転じた。

藤沼(11-6、8-11、8-11、10-12、9-11)王

この試合はテレビ放送されたから、観た人も多いだろう。
第1ゲームを藤沼が簡単にとったときは、
「お、藤沼か」とその初優勝を予期したかもしれない。

同じ日立化成の実業団チームに所属するふたりだし、
その手の内はよく知っていて、
それは藤沼有利にはたらいたと、
この第1ゲームを観て思った人もいるかもしれない。

第2ゲームに入っても藤沼の優勢はつづいたが、
後半から俄然様相が一変する。
その後、第4ゲームで一瞬、藤沼の勝機が垣間見せたけれど、
それも王の実力の前にあえなくしぼんだ。

昨年度のこの卓技研の「全日本予想」で
かなりの期待を込めて藤沼が活躍することを予想した。
しかし、ああそれなのに、
あろうことか藤沼は4回戦の初戦で
カットマンの亀崎(早稲田)に敗退した。

しかし、しかし、藤沼は現在の日本女子で
屈指の卓球センスの持ち主であると
卓技研はにらんでいる。
ただ、問題はそのメンタルなのだ。
もっと攻めればいいのに、なぜか弱気というか、
いまいち勝負に淡泊で大勝負を逃し、
ここのところずっと世界代表やオリンピック代表の選から外れていた。

今年度の大会の藤沼は、
いままでの藤沼とは違った。
それが決定的にあらわれたのは準決勝の平野戦だった。
かつて同じミキハウスに所属していた平野をストレートで、
しかも攻め抜いて、
ただの一度も平野に隙を見せずに圧勝したのだ。

平野(8-11、4-11、6-11、8-11)藤沼

ではそんな、石川、樋浦、藤沼はなぜ王の前に、
「勝負として」負けたのではなく、「力負け」したのか?
そう、ここははっきりと「力負け」を自覚したほうが
これからの当人たちの成長のため、
そして日本女子卓球の進化のためにいいだろう。
そのことについて、明日につづく。
卓技研・秋場




全日本選手権
(平成21年度)
観戦記(2)

【女子シングルス】


日本女子の精鋭は王のカットの前に屈した。
そしてそれは「力負け」だと述べた。

では、その力負けとはどういうことか。
これはもう、字句そのもの、
日本女子は身体から繰り出す力学的な力が脆弱なのだ。
フィジカルが弱い。

カットマン攻略として、
石川も樋浦も藤沼も教科書的に攻めた。
その攻撃内容は、
ドライブではループ、スピードを織り交ぜ、
強打するところでは強打し
(ほんとはもうちょっと強打できる球があったけど)、
ストップするところでストップし、
ツッツキでねばるところはねばり、
王の反撃にもしっかりと
ブロックからカウンター攻撃に転じていた。

しかし、王には通じなかった。
教科書的にはよくがんばった。
カウント的にも惜しかった。
でも、試合内容やカウントは関係なく「完敗」だとみる。
それはなぜか、「力負け」したからだ。

たぶん、このまま、いつもと同じ練習で、
いつもと同じカットマン対策をたてて、
3か月、半年、1年と訓練を積んだとしても
王には勝てない。
絶対にだ。
なぜなら、教科書が古びて、現代に合わないからだ。

いや、カットマンだけではない。
ヨーロッパの攻撃型にも昨年の横浜世界選手権で、
平野と福原は「完敗」したではないか。
その理由はなぜか。
テクニックとして、ヨーロッパの選手に平野や福原、
それに日本女子選手は劣っているだろうか? 
私はまったくそうは思わない。
テクニックに関しては
日本女子のほうが相対的に上回っている。

石川、樋浦、藤沼たちが、王に繰り出すそのドライブは、
東京体育館の3階席から観ていても
パワー不足なのはあきらかだ。

日本女子はスピン的攻撃としてのループドライブ、
それに打球速度的攻撃としてのスピードドライブは
ほとんどの選手がマスターしている。
それに日本生まれのカットマンにも十分それは通用している。
現に、樋浦は国内屈指のカットマン石垣に完勝している。

樋浦(11-6、11-4、11-5、11-13、12-14、12-10)石垣

ゲームカウント4-2、
第4・第5・第6ゲームはデュースと競っているようだが、
ゲーム内容は樋浦が終始押しており、
観ていて樋浦が負ける感じはぜんぜんなかった。
(石垣はとってもいいカットマンだが、フットワークが弱い。
走り込みが足らないのではないか)

王のカットする位置を確認してみよう。
石垣とくらべて、はるかに前である。
カットマンによってその位置は異なるが、
王はかなり前でカットしており、
あの位置で石川、樋浦、藤沼の
ドライブや強打を処理されてしまうほど、
その打球にはパワーがないとみたほうがいいだろう。

現代卓球における攻撃型のカットマン攻略の基本は、
スピンでもスピードでもない。
それはパワーによってカットマンにプレッシャーを連続でかけ、
最後に逆コースやミドル深くえぐって仕留めるものだ。

まずクロス方向に深く
パワードライブを2本、3本、4本と連続して放ち、
カットマンを対角線上に台から放し、
がら空きになった逆サイドへストレート攻撃か、
それを読ませないためにフォアミドルへ、
決定的なパワードライブや強打を見舞うのだ。

だが、日本女子のドライブは
王にプレッシャーをかけられないばかりか、
逆にそのカットにプレッシャーを受けている。

王とやっている本人たちは、
かなりいいドライブが入っているのに、
「王さん、まったくミスってくれない」だけでなく、
「体力的・精神的にきつい」と
思いながらプレーしているはずだ。
ほんと、強いカットマンと対戦したとき、
体力的スタミナはもちろん、
精神的なスタミナも要求されるものだ。

現代卓球の世界のトップのカットマンは、
スピードとスピンがあるパワードライブにも
十分に抗するレベルにある。
しかし、やはりパワードライブを
サイド深くに3本、4本と連続で打たれ、
続いて空いたコースにも休まず打たれては
さすがにどうすることできない。
ちなみに中国のチャン(張)は、
この決定打にフェイントを入れる!

まあ、こう書けば、このようなカットマン攻略は簡単そうだが、
パワードライブをサイドぎりぎりに連続で打つには、
技術はもちろん、
フィジカルの瞬発力と有酸素的な持久力が要求される。
とくにパワードライブに費やすエネルギーは膨大で、
これを5ゲームマッチ、7ゲームマッチで
一貫してやろうとすれば、
それは日常的な有酸素トレーニングをかなり積まないと、
とてもできたものではない。

フィジカルトレーニングを積もうよ、日本女子たち!
あと10パーセント、そのドライブにスピンとスピードが、
強打にスピードが加わり、
それがパワーとしての威力となったとき、
日本女子は見違えるだろう。
つづく



全日本選手権
(平成21年度)
観戦記(3)

【男子シングルス】

さて、男子シングルスの観戦記である。
今年度の総論は、
中堅とベテランが意地を見せたという感じで、
昨年度のように
青森山田の中高生の猛烈な活躍からくらべると、
いささか新鮮味に欠けていた。

また好ゲームも昨年より少なく、
テレビ放送で男子決勝の水谷対吉田戦のような、
ほぼ一方的な展開に終始するゲームが
準々決勝などでも多かった。

今年度もっとも注目したのは、
本サイト「全日本の予想と見どころ」で述べたように、
やはり昨年に世界の強豪を
バッサバッサと打倒した岸川聖也であるので、
彼のゲームを注視した。

まず、岸川の対戦相手とその戦績を挙げてみる。

●4回戦
岸川4(4、6、-8、8、-9、4)2谷村直樹(関商工高・岐阜)

●5回戦
岸川4(-8、10、-5、-7、6、3、10)3吉村 真晴(野田学園高・山口)

●6回戦
岸川3(-9、10、-2、8、-5、8、7)4張 一博(東京アート・東京)

4回戦、5回戦の相手は高校生である。
とくに5回戦の吉村戦は、
岸川は負けても不思議ではない試合内容だった。
なんとか、これまでのキャリアで凌いで、
「勝った」というよりも「負けずに済んだ」という印象が残った。
岸川はこの試合の後味は悪かったのではないだろうか。

6回戦の張との試合は
ゲームカウントこそ3-4のフルゲームだったが、
「たぶん岸川が負けるだろうな」
という気持ちを抱きながら観戦していた。
だから、岸川が負けたときは、ぜんぜん驚かなかったし、
張のほうが力量的に上なのではと、
ある面、実力通りの結果が出たと納得したものだ。

「予想と見どころ」では、
「卓球の進化」とまで岸川の卓球を評価し、
それを白鵬の横綱相撲のようだと並びたてた。

今回の試合の岸川はたしかに「横綱相撲」だったけれど、
しかしそれはプレースタイルが「横綱相撲」で、
実力はまあ「前頭筆頭」か「関脇」という程度ではなかったか。

じつは岸川のプレースタイルを貫徹するのは、
かなり難しいことなのだ。
だから、これまで多くのトッププレーヤーが、
そんなプレースタイルを指向しようとしなかったのだ。

そのむずかしさとは、やはり一方的に攻め込まれると、
防戦一方になって、
攻めの圧力の前に翻弄されてしまうのである。

先に攻めることは
卓球というゲームにおいて相対的に優位であることは
いうまでもないだろう。

試合で、あなたが攻撃型で対戦相手も攻撃型の場合、
あなたの敗戦の原因の主は先に攻められた、
というケースが圧倒的に多かったはずだ。
それがために試合では、
3球目攻撃、4球目攻撃を念頭において、
サービスやレシーブに入るのだ。

ところがこれもバランス加減で、
あまりにも「攻め」の意識が過剰すぎると、
どうしても自爆的なミスが多くなる。
それに相手だって、同じように先に攻めようとしているのだから、
攻めの意識が過剰すぎると、防戦態勢がおろそかになる。

この攻守のバランスを現代卓球において理想的に求めたのが、
チャン・イニン(張)であり、
そして日本の男子では岸川、
女子では平野といったプレーヤーなのである。

女子準決勝で平野は、
藤沼との対戦で0-4とストレートで完敗したのも、
藤沼の前陣において
ライジングで広角に打ち抜く強打に
応戦できなかったことにある。

やはり平野や岸川のようなプレースタイルは、
ボールを持とう、あるいはボールを持てる能力があるため、
また自分のタイミング(間)で打とうとするあまり、
攻勢の点で後手にまわることあるのだ。

事実、プレースタイルも実力もまさに「横綱相撲」の
白鵬が負けるときは、
立ち合いから攻め込まれ、一方的に防戦となるケースだ。
四つに組んだり、相手の攻めを受けて、
一旦止めることができれば、
あとは楽々と相手を料理するのだが、
息つぐ間もなく攻め込まれると、
自分の横綱相撲という「型」、
つまプレースタイルに入ることができずに
土をつけられるのである。

岸川も平野も、
もう少しは3球目、4球目の先手攻撃の意識をもたないと、
これから何度も同じような痛い目に遭うことは
まちがいないだろう。
(つづく)


全日本選手権
(平成21年度)
観戦記(4)

【男子シングルス】


今年度の全日本の勝敗の妙味の筆頭は、
やはり水谷対張の準決勝だろう。

水谷4(-10、5、-8、-8、9,4、9)3張

ご存知のように、
水谷はゲームカウント1-3と追い詰められ、
最終第7ゲームも
ポイント7-9から逆転しての勝利だった。

危ないといえば危ないゲームだが、
毎年水谷は優勝するまで
二度はこのようなカウント的に
非常に危ないゲームをこなしているものだ。

今回は一度だけで、
この張戦だけが危なくて、
あとは余裕の勝利だったのだが、
今年の水谷は、
その強さにひとまわり輪を掛けたような力強さを感じた。

どんな対戦相手がこうようとも、
びくと揺れない
最強の「免震構造住宅」というイメージだ。

それにしても勝負強い男だ。
観戦していて、水谷が追い込まれても、
どうせまたなんとか勝つんだろうという雰囲気が
コートやその周囲を包むという「勝ちオーラ」がある。
これも今年度まで3連覇した積立貯金の利息だろう。

決勝の対吉田戦だが、
はっきりと凡戦だった。
始めから終りまで、
吉田は水谷のサービスが読めないのか
まったくとれなかった。

水谷4(4、10、7,8)0吉田 海偉 (個人・山口)

水谷は楽なゲームだった。
いや水谷は楽なゲームにするように、
しっかりとした「全日本対策」をたててきたのだ。

水谷は全日本の数カ月前から、
この大会に向けて新しいサービスを開発し、
その練習を積んできた。

水谷のサービス力は世界でも屈指だが、
その人物がさらに新しいサービスをもって
この大会に臨んできたのである。

これはトッププレーヤーにかぎらず、誰でも知っていることだが、
試合でサービスがどれほど重要か、
水谷が全日本チャンピオンとしての
範を示したといえるだろう。

水谷のサービスがいいことを
吉田はこれまで全日本で何度も苦杯を飲ませられて
いやというほどわかっているので、
とうぜん前にやられたサービスをイメージし、
またその対策もとることはまちがいない……。
と、いうようなことを水谷は読んで、
その吉田の対策を無にする
新開発のサービスで返り撃ちにしてみせたのだ。

初級・中級のプレーヤーのサービスは
スピン・コース・スピード・トリックモーション・配球と、
どれもおしなべて中途半端なものだ。

なぜ中途半端かというと、
そういうサービスは楽に出せるからだ。
せめて、スピンとコースだけでも
、しっかりとすればどれほど試合で有利になるか。

サービスの練習は一人でこつこつとやって、
あまりおもしろい練習ではない。
そのためにほとんどの選手が
中途半端はサービスしかだすことができない。

どんなサービスでもいい。
たとえば誰でも出すバックスピンサービスの回転を
あと10パーセント切れ味がよく、
相手コートでツーバウンドしてネットに戻る
ショートサービスをマスターすることができたら、
試合でどれほど相手がポロポロと
ネットにかけてくれることか。

まあ、だまされたと思って、
このサービスを練習してマスターしたまえ。
その練習の努力は
試合で二倍のよろこびとなってかえってくるだろうから。

さて、今年度男子シングルスで勝敗ではなく、
内容でもっともよかったのが水谷対丹羽戦だろう。

水谷4(8、―5、7、―9、6,7)2丹羽(青森山田中・青森)

カウントこそそれほど競ってはいなかったけれど、
水谷からこれほど攻めて
鮮やかにポイントしたのは丹羽だけだろう。

丹羽がポイントを挙げるときは、
ほんとにみごとな攻撃展開で、
それは力感を超えた「美」にいたるほど
昇華されたものだった。

やはり丹羽は只者ではない。
この少年が青年になるとき、
どれほどのビッグなプレーヤーに成長しているのか、
期待は超でかく膨らむ。
それがバブルに終わらせないためにも、
丹羽本人や周囲の関係者は、綿密にしっかりと鍛え、
またそういう環境を提供しなくてはならないだろう。

水谷はこれで、弱冠二十歳にして
全日本4連覇の偉業を成し遂げたわけだが、
2009年の韓国オープンで朱世赫、オフチャロフ、
そして決勝で郝帥を破ったのは決してフロックではなく、
着実にその力を根付かせていることを
今年の全日本優勝は物語っていた。

とりわけ準々決勝で朱に勝ったことに、
正直、筆者は驚いた。
攻撃型は強豪カットマンによって、
その真価がためされるが、この勝利によって、
水谷の力量の真価が証明されただろう。

今年度のプレーの特色は、
なにより下がることが少なくなって、
安易にロビングをあげることもなく、
また攻めも早くなった。

今回の全日本で惜しまれるのは、
卓技研の予想で「優勝」とした松平健太だ。
日本男子ナショナルチーム宮崎義仁監督も彼に期待する旨、
テレビ解説で発言していたが、
やはり今年5月(23〜30日)に開催される
モスクワ世界選手権団体では、
ぜひレギュラーで出場してほしいと思っている。

さらに2012年のロンドンオリンピックで金メダルをねらうには
健太抜きには考えられない。
青森山田の吉田安夫総監督も述べていたが、
パワーとスタミナ不足は否めない。
健太 飛べ! いまこのときこそ…

男子シングルス準々決勝

高木和卓(-8、-6、10、7、-6、12、9)松平賢二

この試合の前日、弟の健太が高木和卓に負けているので、
兄の賢二は弟の「仇討」といきたいところだった。
ゲームの全体の流れとしては、終始賢二の勝利に傾いており、
とくに第5ゲームを賢二が獲ったところで
勝負ありと多くの観客が思ったのではないか。

こうやって結果を見ると、デュースにもつれこんだ第6ゲームが、
この試合のヤマだったのだろう。
それでも、ファイナルゲームも賢二は有利に試合を進めていた。

高木和といえば、健一という兄(同じ東京アート所属)も卓球選手で、
今回の全日本に出場している。

さて高木和卓だが、健太を破り、
世界選手権の内定をとった賢二を返り討ちにしたのだが、
前日の「卓VS健太」戦で、
負けた健太のふがいなさだけをクローズアップさせたという
筆者の反省がある。
それはむろん、
卓のすばらしい戦いぶりの評価をしていなかったからだ。

卓はラリー戦にはめっぽう強く、
とくにフォアクロスの打ちあいなら、
日本男子ナンバーワンではないか。
少々不利なラリー展開になっても、
必ずと言っていいほどラリーの途中で盛り返して反撃、圧倒するのだ。

正直、卓の存在はここのところ、
「過去のひと」になっていた。
もちろん、4年ほど前までは、
かなり全日本男子のなかでも嘱望されていたが、
水谷や岸川、健太、それに丹羽らの台頭によって、
卓球ファンの記憶から薄れていた。
ところが、今回の松平兄弟との試合ぶりを観て、
「うわあ、高木和卓ってこんなに強いのか」とびっくりしてしまった。

打球パワーと思い切りのよさは、日本男子屈指だろう。
ぜひ、卓は今回の試合を契機として、
日本男子ナショナルチームへの復帰を勝ちとってもらいたいものだ。
来年7月のロンドンオリンピック男子団体メンバーは水谷は確定し、
丹羽もほぼ確実視されているが、第3のメンバーが空いている。
健太、賢二、岸川、張、吉田といった候補のなかに、
卓が加わったことはまちがいないだろう。

男子準決勝

水谷(10、-6、7、10、9)高木和卓
この試合も水谷が負ける感じは1パーセントもなかったけれど、
でもしかし、そのラリー戦はかなり白熱していた。
ここでもフォアクロスの打ちあいになれば卓が打ち勝っていた。
水谷は卓のパワーに圧されることもあったが、
そのコーナーワークのたくみさと
ドライブ変化(曲げるドライブ)の多彩さで対抗した。
カウントとしては競っているが、
水谷本人の胸中としてはかなりの余裕があったはずだ。
その表情には、勝負へのあせりは1度も1ミリも感じさせなかった。

張(6、5、4、11)吉田
中国出身プレーヤーどうしの一戦として興味がそそられたが、
カウント的にも、実戦においても張が圧倒していた。
張は前陣から中陣までのエリアで攻めることも守ることもでき、
またドライブだけでなく強打も打てる
柔軟なオールラウンドタイプの強みを
この吉田戦でいかんなく発揮した。
さて、今後吉田はどうするのだろうか。
いまの「典型的ペンドラ」(といっても中ペンだけど)スタイルは
明らかに限界にきている。
裏面を使わないとするなら、
バックハンド系技術の練磨と、
もっと前陣でプレーする必要があるのでは。
                          つづく
秋場龍一

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