技術論 5%飛躍論 of 卓球技術研究所t3i

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技術論 5%飛躍論
その1


5パーセントアップして、ワンランクアップを!


例によって、プロ野球の話から。

日本を代表するストッパーの阪神・藤川、
それに巨人の守護神・クルーンは
ともに150キロを超えるスピードボールを
ほぼ常時投げられる。

この球速によって彼らは
球界を代表する抑えのエースとしての地位を
がっちり確保している。

もちろん藤川もクルーンも変化球を投げるのだが、
彼ら程度の変化球は
プロの一線級ならほとんどの投手が投げるレベルだ。

なんといってもあのスピードが打者を翻弄し、
変化球はあのスピードがあるからこそ活きるのである。

ところで日本の球界で本格派といわれる
速球投手の直球の平均球速は
145~150キロあたりだろう。

この球速はかなり速く、
打者はそのスピードをかなり意識して
打席にたっているはずだ。

だが、これくらいの球速は
多くの投手が投げられるもので、
プロのバッターだったら
球種のヨミがあたったり、
投げたボールがあまいコースなら、
高い確率でヒットできる。

だが藤川とクルーンの155キロのスピードボールなら、
たとえ球種を読まれても、
あまいコースに入っても、
そう簡単にヒットできるものではない。

クルーンなんかコントロールのわるさも一流で、
巨人のキャッチャー阿部は
ミットをど真ん中にかまえている。

阿部にしたら、ボールを連発して四球を出すよりも
ど真ん中に投げったって
そうは打たれやしないという気持ちが、
あのかまえをさせるのだろう。

事実、クルーンがど真ん中に投げても、
空振りか、あたってもポップフライがほとんどだ。

まさにスピードボールのおかげである。

では155キロの球速が
どんなにすごいのかといえば、
日本の本格派速球投手の平均が147キロだとすると、
約5パーセント程度速いだけである。

数値にすれば「たった5パーセント」の速球で、
彼らは日本を代表するストッパーの地位を射止め、
数億円という年俸を稼いでいるのだ。

しかし数値では「たかが5パーセント」であっても、
155キロ以上出せるピッチャーはそうはいないし、
素質ある投手が訓練を重ねても
150は出ても155は出ない。

どうあがいても
出せないものは出せない世界なのだ。

これはホームランバッターと同じで
「生まれつき」とか
「ボールを遠くに飛ばせる才能」などといわれ
先天的なものとされている。


その2


カベにぶちあたっているプレーヤーたちへ

さて、ようやく卓球の話である。

卓球をやりはじめて数年たつと
「カベ」にぶちあたる。
これはもう、かならず、
絶対にそういう障壁に遭遇する。

技術的なカベ、肉体的なカベ、精神的なカベ、
そして試合での順位というカベ……。

人によってそのカベとの遭遇の仕方は異なり、
試合でどうしても1回戦が勝てない人もいれば、
2、3回戦は勝っても
ブロックのシード選手にあたるとかならず負ける人、
またベスト4には入賞するものの
それ以上にいけないとか。

あるいはみなさんもよくご存知のように、
愛ちゃんは全日本で優勝どころか、
これまでベスト4が最高というのも、
彼女にとっては大きな「全日本のカベ」で
あることはまちがいないだろう。
おそらく福原は、
この全日本のカベをぶちやぶって優勝したとき、
ワンランクアップし、
世界トップの仲間入りができるだろう。

いま世界のトップに立つプレーヤーも、
ここまで上り詰めるまで、
このカベを何度も何度も乗り越えてきたのだ。

カベを乗り越えるには、
カベにぶちあたっている原因を
自分で客観的に分析することが何よりも大切だが、
どうしてもその原因が摘出できないことや、
仮に分析できたとしても
その解決法が見いだせないことがある。

そんなときこそ「5%飛躍論」を活用してもらいたい。

この卓球上達理論は、
いまの自分の技術を
5%だけアップするように意識して、
具体的に5%アップを達成するという、
ひじょうにシンプルなものである。

ためしに、その項目を列挙してみよう。
たとえば――

●サービスのバックスピンの回転量をあと5%アップ

●ドライブ、強打、カットをあと5%深く入れる

●ドライブのスピードとスピンをあと5%増す

●強打のスピードをあと5%増す

●カットの切れをあと5%増す

などなど、「あと」はあといくらでもあるだろう。

この5%は「努力すればできる」たぐいのものだ。
藤川やクルーンのような
先天的な才能が必要なたぐいのものではない。

そして、もしこの5%アップが達成できれば、
その効果は5%レベルではなく
20%にも30%にも、
いや100%にも200%にもアップするだろう。


その3 

たとえば、バックスピンサービスの回転量を5%アップすると

たとえばバックスピンサービスの切れ、
つまり回転量を5%アップすれば
相手はおもしろいように
ネットにかけてくれるだろう。

もちろん最初からそれほど切れていない
バックスピンサービスなら
5%アップしてもあまり影響はないだろうが、
あなたのカベの範疇におけるクラスのレベル
の平均からの5%アップという前提である。

話を分かりやすくするために
バックスピンの回転量が
平均1秒間に100回転だとしよう。

これを105回転にしようという話である。
そして、これは誰もができる話なのだ。

毎日バックスピンサービスの練習をして
105回転が出せるようになったとする。

そしてこれを試合で試してみると――。

レシーバーの相手は、
あなたの出したバックスピンサービスを
かなり切れていると読んで、
それに応じたツッツキの
ラケット角度を出してリターンする。

しかしネットにかけるだろう。

なぜなら100回転なら
いままで経験があるので対応できるのだが、
105回転は未経験なので、
そのラケット角度が出せないのだ。

いや、たった100と105のちがいじゃないか、
そんなもの簡単にリターンできる、
という人もいるだろう。

おそらくそういう人は、
ほんとうによく切れたバックスピンサービスを
リターンしたことがないのだろう。

たった5%アップの切れ味でも、
いつものよく切れたバックスピンサービスから
5%回転増しだと、
それをリターンするときの、
ラケットにボールが触れた瞬間のフィーリングは、
けっこう衝撃的なものになるのだ。

さらにその5%アップの効果は
相手にネットにかけさせて
1ポイントとっただけに終わらない。

よく切れたバックスピンサービスを
ツッツキでリターンしようとすれば、
ラケット面を上に開かなければならない。

しかし、実戦の試合で
ラケット面を開くことは怖いことなのだ。

なぜかといえば、
もちろんサービスの回転量と
ラケットを開いた角度がちがって、
大きく開きすぎたら、
とうぜんリターンは浮き、
3球目攻撃のエジキとなるからだ。

つまり5%アップは、
相手がリターンするツッツキのラケット角度にたいして
あいまいさを許さない
厳しい選択を迫ることになるのだ。

ほとんどの選手はバックスピンサービスにたいして、
だいたいこれくらいのラケット角度を出せば
ネットにもかけないし、
浮きもしないという感覚を身につけているものだが、
そんな「だいたい」という甘さを
5%アップすることで排除できるのだ。
これはかなり絶大なプレッシャーを
相手に与えることになる。

その4

たかが5%、されど5%、そしてだれもが達成できる5%!


バックスピンサービスの切れ味を5%アップすると、
学習レベルが低い対戦相手は何度もネットにかけるだろうし、
すぐ学習する選手でもかなりのプレッシャーを受けることになる。

さらに、である。
105回転ができると、
こんどは95回転のサービスを混ぜて出すと、
相手のリターンが浮いたり、
落としたりしてくれる確率が高くなるのだ。

95回転も、そこそこは切れているバックスピンサービスなのだが、
105回転を出すことで、レシーブを浮かすことがある。

なぜかといえば、
相手は105回転のサービスをリターンするときの感覚を覚えており、
そのサービスの切れ味にひじょうにナーバスになっている。

そういう印象のあるときに95回転のバックスピンサービスを出されると、
どうしてもリターンを落とす、
つまりネットにかけるのが怖い気持ちが強いので、
ラケット面を105回転の角度で大きく開くことになる。

そうすると、バックスピンサービスなのに、
相手はボールを浮かせてしまうことになるのだ。

バックスピンとナックルのサービスを
組み合わせて使うことは常套だが、
同じバックスピンサービスのなかで、
少し切った(95回転)のと、
ひじょうによく切れた(105回転)を混ぜると、
その回転の判別がかなりむずかしいのだ。

回転(変化)サービスを判別するポイントは、
インパクトと飛んでくるボールを見るところだが、
どちらもバックスピンサービスの場合、
どちらのポイントにおいても、
その判別はシビアなものになる。

だって、レシーバーにとっては、
サービスのスイングはバックスピンのフォームだし、
飛んでくるボールも
95回転も105回転もバックスピンに変わりはないので、
ラケット角度の調整はかなりの困難が要求されるわけだ。

ちなみに、サイドスピンサービスも
「回転の多い」「回転が少ない」など、
回転量に変化をつけると効果的だ。

とくにこちらのサイドぎりぎりを突いてくる
サイドスピンサービスのリターンが巧みなプレーヤーとの対戦では、
サイドスピンの回転量を5%増減するだけで、
オーバーミスを誘うことができる。

もうここまで述べればご理解いただけるだろうが、
サービスだけではなく、
ドライブやカットだって、
5%回転量に変化をつけると、
その回転の増減量を判断しづらく、
相手を撹乱することができる。

回転量だけではない。
たとえばフォア前のショートサービスだが、
あと5%、一般的なショートサービスより短く出せればかなり効果的だ。

私は身長180センチだが、
フォア前にほんとうに短いサービスを出されたら、
かなり身を乗り出すという感じになる。

これがなんでもないナックルサービスでもいやなもので、
ツッツキでレシーブして、
自分のバック深くツッツキを入れられるだけで
かなり不利な展開になる。

これがふつうの「短さ」のショートサービスならなんでもないのだが、
そのふつうよりたった5%短いだけで、
そのプレッシャーは桁違いに大きなものになるのだ。

この「5%飛躍論」は
初級レベルから世界のトップレベルまで
普遍的に適用できる。

ちなみに石川佳純は
さる2月11日開催された「ジャパントップ12」において、
第1ステージで王輝を3-1で、
そして決勝で福原愛を4-1で圧勝した。

その石川は
1月の全日本敗戦(王輝戦)の要因を
卓技研の見解と同じくパワー不足と認識し、
以降の練習でパワーが出るフォームに改良した成果だと
本人が述べている。

たった1カ月で
そうは大きくパワーがアップするわけはない。

たぶん、「5%」ほどアップしたにすぎないのだ。

しかし、その5%が、
全日本覇者の王を、
またこれまで2戦全敗の福原を破る
という大きな成果となったのである。

たかが5%、されど5%、そしてだれもが達成できる5%!

卓技研・秋場

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