ファースト・サービスとファースト・レシーブ

 何度も述べるが、レシーブは卓球技術のなかで最もむずかしいパートである。本サイト集中論でもレシーブについて言及しているので、合わせてお読みいただきたい。
 実戦では、レシーブの優劣が大きくものをいう。逆にいえば、それだけ卓球というゲームにおいてサービスが有利であり、サービスに回ったときは、できるだけ得点しなければ試合を有利にすすめられないということになる。
 本稿では、レシーブの戦略的な考え方について展開するが、それは同時にサービスにも関係するので、「戦略的サービス論」として読むこともできるだろう。つまり、卓球ゲームではサービスとレシーブが、きわめて重要なパートである、ということをよく理解しよう。
 はじめての相手と試合をするとき、相手のファーストサービスで、相手の実力の70パーセント以上はわかるものだ。
 たとえば、試合がはじまって、相手の最初のサービスをかなり強力なフリックでレシーブしたものの、それを相手にカウンターでノータッチ打ち抜かれたとしよう。そんなとき、あなたはどんな心境になるだろうか? 私がレシーバーなら、優位にたった気持ちになる。
 なぜ、ノータッチで抜かれ、ポイントをとられたほうの私が優位な気持ちになったのかといえば、レシーブを強力にフリックできたからだ。相手にカウンターで決められたことは、相手のサービスを強力にフリックできたことと比べれば、あまり大きなことではない。
 また、相手がファーストサービスで、強力にフリックされるサービスをだしたということも大きな意味がある。「先手必勝」というとおり、戦いのファーストコンタクトで機先を制するのは、勝負の常道だ。そのまさに機先であるファーストサービスを強力にレシーブした私が、この試合の先手をとったのである。たとえ、それをカウンターで逆襲されてポイントはとられたとしても、私が精神的に優位にたったことはくつがえせないのだ。
 また、強力にフリックされるようなサービスを初球にだしたということで、相手のサービス力と、そんなサービスをだす相手の総合的な技術力を推量できたことで、私は技術的にも優位にたったのである。
 いや、そんなことはない。相手がカウンターでファーストポイントをとったのだから、先手をとったのは相手であり、技術力もある、という意見もあるだろう。たしかに、この考えも正当である。だが、実戦上でのサービス・レシーブの比重の大きさを考えれば、1発や2発カウンターをくらったとしてもしれているのだ。
 あるいは、こういうケースもある。相手のファーストサービスは、私のフォア側へのかなり速いスピード系ロングサービス。それを私はライジング強打で、みごとノータッチで抜いて得点したとしよう。この場合、相手がこの試合の先手をとり優位にたったのである。
 いや、そんなことはない。相手のかなり速いスピード系ロングサービスを1発で抜いて得点した私のほうが、先手をとり、優位にたったに決まっていると。
 でも、このファーストサービスに影響された私は、その後、レシーブで優位になることはできなかったのである。そのフォアへのロングサービスをファーストサービスで見せられたために、試合の土壇場で、得意のフォアハンドでバックサイドに回って、攻撃的なレシーブができなくなったのだ。バックに回り込んだとき、フォアへあのスピードサービスをだされれば、まちがいなくノータッチエースをくらうことを怖れたからである。


「レシーブ5割得点」必勝論

 実際の試合現場を思いだしていただきたい。サービスがよく効いて、どんどん得点できたときは、試合運びに余裕がでて、楽な気持ちで戦い、逆に相手のサービスを返せないとき、勝てる気がしなくなるのではないだろうか。
 サービスはレシーブより、絶対に有利なのだ。だから、サービスのときは圧倒的優位に試合をすすめるべきである。理想的には、サービスで全部のポイントをとり、レシーブでは半分とる。もし、これが実現すると、自分のサービスで開始したときは11-3、自分のレシーブで開始したときは11-4という大きな点数の差がでる。
 実際の試合では、これほど極端な例はないが、サービス/レシーブを考えた場合、現実的な基本戦略になるだろう。レシーブ論として考えると、もしあなたが、強力なサービスや3球目攻撃を有していたなら、レシーブでの得点は半分でも、圧倒的優位に試合を展開できるということである。レシーブは5割の得点率で十分ということだ。
 レシーブは、野球でいうなら、バッティングとよく似たパートである。ピッチングがサービスというわけである。これで思いだしたのが、「サービスの配球は、プロ野球のバッテリーの配球を観て勉強する」という言葉だ。現在、青森山田学園卓球部の総監督である吉田安夫氏が、まだ埼工大深谷高の監督をされているときにお聞きしたものだ。
 さて、プロ野球の世界では、バッティングは3割打てば強打者となり、3割3分以上なら首位打者を争い、3割5分を数年連続するとイチローのように天才バッターと呼ばれるようになる。10球のうち、たった3本打てば強打者になるということは、いかに投手が投げるボールを打つことが、むずかしいことであるのかという証明である。また、よく野球は投手で決まるともいわれるが、これもバッティングのむずかしさと関連した言葉である。投手が相手を零封すれば、1点とるだけで勝てるということになる。
 野球のヒットは、卓球でいうとレシーブポイントということになるだろうが、レシーブで3割も得点するのは至難の業だろうし、もし得点できれば、かなり優位な試合展開になるだろう。バッティングやレシーブというパートは、投球やサービスよりも劣位にあることはまちがいないのだ。
 そんなレシーブを制する者が卓球を制することはまちがいないだろう。しかも、レシーブにまわったとき、5割も制すれば圧勝である。
 次回はレシーブにとって重要な「間合い」をテーマに展開したい。

                                          (秋場龍一)