ラケットスピードが高まる

 今回は、回転力増強(スピンアップ)のための技術を紹介しよう。それは、サービスのバックスピン、トップスピン、サイドスピンやツッツキのバックスピン、ドライブのトップスピン、カットのバックスピンなどに使える技術である。
 「指をぎゅっと握る」
 ただ、これだけだ。
 グリップを柔らかく握り、インパクトの瞬間に「指をぎゅっと握る」のである。シェークハンドもペンホルダーも、一瞬ぎゅっとグリップを握るのだ。
 たった、これだけのことで、ボールの切れ味がよくなり、スピンが飛躍的に増量する。ほんとうに、とっても簡単で理解しやすいテクニックである。しかし、不思議なことに、意外と普及していないのだ。
 これまで、回転量を増すテクニックとして、「手首を使う」ことは一般的によく知られていた。たとえば、バックスピン・サービスのとき、手首を使って、ボールの底を切る方法だ。
 しかし、手首を使うよりも、インパクトの瞬間に、ラケットのグリップを指でぎゅっと握るほうが、ラケットスピードがアップして、よく切れる。しかも、スイングの安定感は指を握るほうがまさる。ただし、手首を使っても安定するなら、インパクトの瞬間にぎゅっと握り、手首を柔らかくして、手首を軸にスイングすれば、なお切れ味はよくなるだろう。
 スピンの回転量を増すには、ボールがラケットにあたる瞬間のラケットスピードをいかに速くするかにかかっている。とくにサービスのスピンに必要なのは、大きなパワーではなく、一瞬の切れ味である。とりわけ、テーブルで2バウンドするようなショートサービスで、強烈なバックスピンを出すには、手首よりも指を握ったほうが断然出しやすい。

サービス、ツッツキの切れ味をよくする

 もう少し、具体的に指をぎゅっと握る「フィンガーテクニック」を解説してみよう。たとえば、フォアハンドのバックスピン・サービスである。
 シェークの場合は、サービスは親指と人差し指だけを使って、残りの指を外す人もいるが、その場合は親指と人差し指をインパクトの瞬間にぎゅっと力をこめることだ。5本の指、あるいは小指を外して4本の指をグリップにかけている人なら、その指をインパクトの瞬間にぎゅっと握るのである。
 ペンは、表面の親指と人差し指、裏面の中指をインパクトの瞬間にぎゅっと握る。
 このとき、下半身を使うように意識して、右ラケットハンドの人なら、右の太股に体重をかけると、よりラケットスピードがアップするだろう。
 さて、ここまでやって、ひとつとても大切なことに気づく。ラケットをぎゅっと握ると、ボールを切るスイングが急激に止まるのである。ぎゅっと握ることで、瞬間的にラケットスピードは高速にギアチェンジするのだが、また一瞬にして急ブレーキがかかるのだ。どういうメカニズムによって、こうなるのかよくわからないのだが、ラケットスイングを急激に止めると、ラケットスピードが急激に高かまるのだ。
 以上のテクニックは、ツッツキで強いバックスピンをかけるときにも適用できる。フォアでもバックでもいいが、ツッツキのときにバックスピンかけるには、インパクトの瞬間にぎゅっとグリップを握る。そうすると、実に切れ味のいい強烈なバックスピンがかかる。これも手首は使わない。人によっても異なるだろうが、私の場合は、手首を使わないほうが安定し、切れ味もよくなる。これも握った瞬間、ラケットスピードが高まり、また一瞬にして急ブレーキがかかる。
 ツッツキの場合、前腕を速く振るよりも、指をぎゅっと握るほうが、安定度は増し、相手にも切ったことがさとられにくい。また、ツッツキもサービスと同様に、下半身の使い方が大切で、腰が身体のセンターであることを意識して、「腰でボールを運ぶ」ようにスイングするとミスが少なくなるだろう。


ドライブのフィンガーテクニック

 ぎゅっと握るフィンガーテクニックは、ドライブにも使える。
 ドライブをかけるとき、グリップを柔らかくして、インパクトの瞬間にぎゅっと握り、そのまま急激にラケットスイングを止める。そうすると回転量の多いループドライブが生まれる。だが、今回ここでほんとうに紹介したいのは、このテクではない。
 グリップを柔らかく握り、インパクトの瞬間にぎゅっと握るのは、いままでのどの技術でも同じなのだが、ぎゅっと握った瞬間、そのままぎゅっと握った力を利用して、そのまま振り抜くテクである。これはとうぜん、フォロースルーが大きくなるのだが、こうすることでパワードライブに生まれ変わる。
 ドライブをかけるとき、インパクトの瞬間にぎゅっと指を握り、打球したあと、そのまま大きく振り抜くのだ。これで、スピンだけではなくスピードが付いてパワードライブとなる。もちろん、ぎゅっと握る前のグリップはぐらぐらといっていいほど柔らかい。

グリップを意識しよう

 もう一度確認しよう。ぎゅっと指を握るには、その前に、いつもグリップは柔らかく握っておくことが重要である。ほんの軽く握っているから、一瞬にぎゅっと強く握ることが可能なのだ。これは集中論でも述べているが、グリップはソフトに握ることにかぎる。グリップを意識しよう。グリップはメンタルとテクニック両面において密接な影響を受ける。 

                    (秋場龍一)